フィナンシャル・タイムズ紙は、フランスのマクロン大統領が同国の核兵器を欧州の同盟国に配備することについてこれらの国と話し合う用意があると語った旨の解説記事を5月14日付けで掲載している。概要は次の通り。

マクロン大統領はフランスのテレビ局TF1のインタビューで、ロシアに対する防衛を強化するため、フランスの核兵器を欧州の同盟国に配備することについてこれらの国と「話し合う用意がある」と語った。フランスは、ドイツ、ポーランドその他の国との間で、その核抑止力をヨーロッパ大陸に広げるかどうか、広げるとするとそれをどう行うのかについて討議を行ってきている。
トランプ大統領が米国の欧州での軍事プレゼンスを低減させようとしており、また、欧州各国に自らの防衛についてより大きな責任を負わせようとしている兆候があることが、そうした動きの背景となっている。
マクロンは、フランスが欧州の同盟国に対して核の保護を提供する際に次の三つの条件を付けるとしている。第一に、フランスは他国の安全保障のための費用を支払わない。第二に、フランスの核戦力の他国への配備によってフランスを防衛する能力が減退することはあってはならない。第三に、他国に配備される核兵器を使用するかどうかの判断は専らフランス大統領に属する。
数十年の間、米国が欧州の安全保障の保証人の役割を果たしてきた。それは、米国が欧州に核兵器を配備してきたことによって支えられてきた。
また、核共有の仕組みの下、(平時は)米国の管理下に置かれている核兵器が(有事の際には)ベルギー、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、トルコから出撃する航空機によって運搬され、投下されることとなっている。ところが、欧州諸国は、トランプが大西洋同盟を弱体化させようとしていることに衝撃を受けており、また、ロシアの脅威を恐れている。
マクロンは、統合された欧州は元々「平和を実現するために設立された」ものであり、経済と貿易の繋がりを強化することに努めてきたが、「今やパワーを結集する時」であると述べた。欧州では、米国が核の保証を撤回することを望むものはほとんどいないが、そうした事態に至る恐れが高まっているため、従来、大西洋同盟を強く支持してきた2カ国である、ドイツのメルツ首相とポーランドのトゥスク首相がそうしたシナリオへの準備を始めなければならないと述べた。
フランスの核戦力は、米国に比べてはるかに小さく、欧州に対し、米国と同じレベルの安全保障を提供できるわけではない。