6月3日付ウォールストリート・ジャーナル紙が「英国は新防衛戦略で核抑止を強化する」という解説記事を掲げ、6月2日に発表された英国防衛戦略見直しの内容を解説している。要旨は以下の通り。

今後10年間の防衛戦略の下で英国は最大12隻の攻撃型原潜を建造し、核弾頭計画に150億ポンド(201.8億ドル)を支出する。6月2日の防衛戦略見直しは、英国が欧州大西洋地域で抑止のために戦闘準備を進め安全保障を強化することを求めている。
スターマー首相は2日朝、スコットランドのBAE造船所で、我々は史上最高に統合され強力な闘う部隊を創設する、と述べた。元北大西洋条約機構(NATO)事務総長の労働党ロバートソン上院議員が主導した防衛戦略見直しは、ロシアの核威嚇への一層の依存が、今後数十年間の英国と北大西洋条約機構(NATO)の最も中心的挑戦だと警告している。
英国が、安全保障枠組みAUKUS(オーカス)で米豪と共同で活動し通常兵器を搭載する新造潜水艦の隻数を明らかにしたのは初めてだ。潜水艦は、7隻のアスチュート型潜水艦に代り2030年代後半から就航する。
この建造は、カンブリア州バローのBAE造船所とダービーのロールスロイス社工場の能力強化に繋がると国防省は言う。海軍の核抑止計画に対する150億ポンドの投資は、その将来を確固たるものとし、将来必要な改善を実施するとの政府のコミットメントを示すものだ、と国防省は付言した。
戦略は弾薬と装備品の備蓄増加、危機や戦時の急速な生産増加の確保等を含む62の提案をしており、政府はその完全実現を約している。英国は、長距離ミサイル7000発と弾薬と動力源を生産する少なくとも6つの工場を新設すると国防省は言う。
見直しは、短期的優先課題は今後5年間でドローン部隊を拡充し敵のドローン攻撃に対抗するレーザー兵器開発に投資することと、軍内部の人工知能活用拡充だとする。空軍は、新たにF35戦闘機を活用しタイフーン戦闘機をアップグレードする、とヒーリー国防大臣は下院で述べた。
国防省によれば、英国はさらに、ウクライナ戦争の教訓を踏まえ、サイバー防衛強化のためサイバー電磁戦司令部を創設する。見直しは、この司令部の本年末までの創設を求めている。脅威は増大しつつあり、ロシアの挑戦に正面から向き合うべきことは分かっている、とヒーリーは言う。