国防相は週末に掲載されたタイムズ紙とのインタビューで2034年までに防衛費を対GDP比3%まで引き上げると述べたが、スターマー首相はそれを確認しなかった。2月に首相は、27年4月までに国防費を現在の対GDP比2.3%から2.5%に引き上げることは確認した。
財政的裏付とコミットメント実現の具体的方法がはっきりするまでは、自分は具体的期限にコミットしない。なぜなら自分はパフォーマンス的夢物語の政治を信じていないからだ。特に防衛と安全保障についてはそうだ、とスターマー首相はBBCラジオ4で語った。
モーニングスター紙の株式市場アナリストによれば、戦略は防衛産業にとっては非常に前向きだが、影響は徐々に後になって現れるだろう。AJベルの財務アナリストによれば、雰囲気の変化が大きい。なぜなら、戦略の意味は短期的上昇に留まらないからだ。対GDP比3%の防衛支出に向けた政府への圧力が高まる中、英国の防衛産業には前進のための大きな機会が存在している。
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米軍基地に配備されている英国のミサイル
今回発表された英国の防衛戦略見直しの内容自体は歓迎すべきものだが、ここでは、2点コメントしておきたい。
第一に、米国の欧州防衛に対するコミットメントが低減していく中で、核兵器国である英国は欧州の核抑止のために何をするのか。確かに、核弾頭計画に150億ポンド(201.8億ドル)を支出するのは素晴らしい。しかし、より深刻なのは、英国の持つ核抑止力が、米国に相当程度依存していることだ。
現在の英国の核戦力は、4隻の原子力潜水艦と、それに搭載されるトライデントⅡミサイルおよび核弾頭から構成されるトライデント・システムのみだ。一つの原潜はミサイル発射管16本を持ち、一つのトライデントミサイルは最大8発までの核弾頭MIRV(多目的弾頭)を装備しうる。すなわち、一つの潜水艦には、能力的には最大で128発の核弾頭を装備できる。
しかし、英国は種々の理由からこれまで保有核弾頭を削減してきている。最新の公表数字は、全体で220発程度だが、これを20年代中頃には180発以下に削減するとしている。
作戦配備は120発。これは、現在の原潜4隻体制(1隻が潜航作戦就役、2隻は訓練、最後の1隻は長期修理)では、内3隻に1隻毎40発が装備されている計算だ。現在各原潜には最大8機のトライデントⅡミサイルが配備されており、各5発の核弾頭装備になる。
