これまで核抑止力を潜水艦搭載核戦力のみに依存していた英国がF-35Aステルス戦闘機を米国から購入して、航空核戦力を追加する旨を決定した。ニューヨーク・タイムズ紙の解説記事が、その背景を解説した上で、英国議会では米国への依存の高まりを懸念する声が出ていることなどを紹介している。
英国は、ハーグで開催される北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に合わせて、F-35Aステルス戦闘爆撃機12機を購入すると発表した。これにより、同国軍は再び空中から核兵器を投下する能力を獲得することになる。
現在、英国が保有する核の三本柱は、トライデント弾道ミサイル発射可能な潜水艦のみである。フランスと同様に、航空戦力を追加することで、英国は危機発生時に行動しやすくなる。両国とも地上配備型の核兵器は保有していない。
英国政府はまた6月24日、欧州に備蓄された米国製B61核爆弾を搭載した同盟国航空機によるNATOの航空ミッションに参加すると発表し、新型航空機の導入によって「冷戦終結後に空中発射核兵器を退役させて以降初めて」英空軍には再び「核兵器の任務」が課されることになると述べた。
英首相府によればこれは「英国の核態勢における一世代で最大の強化」である。また欧州防衛のために核兵器を使用するという米国のコミットメントに対する疑いが収まらない中にあって、NATOの「欧州の柱」を強化するものでもある。
英国は既に空母から運用可能なF-35B戦闘機を運用しているが、核弾頭投下能力は備えていない。専門家は、F-35Aはより安価で航続距離が長く、より多様な兵器を搭載できるとしている。
今回の発表は、英国は自国領土における武力紛争の可能性に備える必要があるとする、6月24日発表の「英国家安全保障戦略2025」の厳しい警告を受けてのものだ。また今月発表された「戦略防衛見直し」は、ロシアを深刻な脅威として特定し、英国に対し、最大12隻の攻撃型潜水艦の建造と数十億ポンド規模の兵器投資を求めている。
英国政府は、F35-A戦闘機はNATOの核任務の一環として配備され、使用する兵器の最終的な管理権は米国が有する、と述べた。
この決定を受け、英国議会では自由民主党議員で陸軍出身のマーティン氏が質問に立ち、「米国の同盟国としての信頼性が不透明な時代に、米国に頼るのは奇妙な選択に思える」と述べた。
