2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年8月1日

 フランスのマクロン大統領と英国のスターマー首相の間で、核抑止力の政策、運用面での調整を含む安全保障面での協力が進展したことを、7月11日付けフィナンシャル・タイムズ紙社説は、欧州の安全保障の強化に資するものであり、英国と欧州連合(EU)の関係再構築にも繋がる可能性がある、と評価している。要旨は次の通り。

英国のスターマー首相(左)に迎えられたフランスのエマニュエル・マクロン大統領(代表撮影/ロイター/アフロ)

 キア・スターマー首相は、今回のフランス大統領の国賓訪問を、欧州連合離脱(Brexit)後初の欧州指導者の訪問として、盛大に暖かく歓迎した。これは、英国がEUを離脱した今、二国間の友好関係を築くために一層努力しなければならないとの認識を反映している。トランプが欧州に自らの防衛により責任を持つよう迫る中、今回の訪問は、欧州協力の原動力となるべき関係を活性化させる一助となった。

 マクロンの訪英に関する報道の多くは、今年これまでに2万人を超える小型船による移民に焦点を当てている。不法移民の規制は重要であるが、この問題が両国関係を支配するようなことがあってはならない。何よりも、マクロンが大陸の安全保障に対する両国の「特別な責任」と呼ぶものによって規定されるべきものである。

 英国の大西洋主義的本能とフランスの欧州の戦略的自立を目指すコミットメントを両立させる必要性は、欧州全体として、米国との強固な防衛関係を維持しつつ、自らの戦力を拡大する上で実現しなければならないバランスを反映している。中期的には、マクロンが示唆したように欧州の防衛は仏・英のリーダーシップに依存するのだ。

 両首脳は7月10日、北大西洋条約機構(NATO)のノースウッド司令部で、ウクライナが停戦した場合の「保証」部隊を編成するための「有志連合」諸国のビデオ会議の共同議長を務め、率先してその姿勢を示している。

 しかし、最大の突破口となったのは両国が、それぞれの独立した核抑止力を調整し、あらゆる「極端な脅威」から欧州を守るために共同で対応する用意があると宣言したことだろう。フランスの核兵器に関する自主性は、長い間ゆるぎない原則とされてきた。

 両国の核兵器数は、ロシアや米国よりも少ないが、欧州のために核の傘を使うという米国のコミットメントが疑問視される中、英仏の核の協力体制が強化されれば、その抑止力はより信頼性の高いものになるだろう。

 通常戦力の協力においても歓迎すべき前進があった。それには、欧州での脅威に対抗するための統合共同部隊の拡大、ストームシャドウ/スカルプに替わる新しい巡航ミサイル開発を加速する「産業協定」および先進的な対ドローン兵器の開発プロジェクトが含まれる。


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