トランプは歴史の中でどう評価されたいのか?
トランプの次男エリック氏の妻で、米FOXニュースの番組の司会を務めるララ氏が、7月、義父のトランプにインタビューを行った。その際、彼女が、歴史の中でどのように評価されたいのか質問をすると、トランプは「米国を救った善良な人(a good person)として思い出してもらいたい」と答え、「米国は状況が悪くなっており、崖っぷちにいる」と続けて言った。
関税賛美の言葉をまき散らしたトランプは、貿易相手国に対して関税措置を使い、米国が抱えている貿易赤字と財政赤字の双方の赤字を是正して、「救世主」として評価されたいのかもしれない。
米有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルの全国世論調査(7月16~20日実施)によれば、51 %が「トランプは米国を傷つける混乱と機能不全をもたらしている」、45%が「トランプは米国を助けるのに必要な大きな変化をもたらしている」と回答した。米国民の過半数は、トランプの発言や行動に対して否定的であるが、その差は6ポイントである。
同調査では、関税措置に対して、「支持」が40%、「不支持」が57%で、支持が17ポイントも下回ったが、40%の支持率は軽んじる数字ではない。
トランプはベッセントとラトニックのどちらを重視するのか?
「トランプ関税交渉の行方『強硬派ナバロ対穏健派ベッセント』」で紹介したが、ベッセントは2000年米大統領選挙で民主党のアル・ゴア候補を自宅に招き、献金を募った。
また、ベッセントは同年、大統領選挙に出馬した故ジョン・マケイン上院議員(共和党)にも献金した。トランプは、ベトナム戦争で捕虜となったマケインについて、「戦争の英雄ではない」「私は捕虜にならなかった人々のことが好きだ」と述べて物議をかもした。トランプとマケインは犬猿の仲であった。ベッセントはバラク・オバマ元大統領やヒラリー・クリントン元国務長官にも献金した。
トランプは大統領に就任すると、連邦政府におけるDEI(多様性・平等性・包摂性)政策の撤廃を指示した。しかし、ベッセントは、バイデン前政権の運輸長官であったピート・ブティジェッジ氏に次いで、2番目の同性愛者の閣僚である。
トランプが、これらの事実を認識していないことはないだろう。では、なぜトランプはベッセントを財務長官に任命したのだろうか。
ベッセントは、2024年米大統領選挙においてトランプ陣営に100万ドル(約1億4800万円)を献金した。また、同年2月、南部サウスカロライナ州グリーンビルで資金集めのイベントを主催し、同陣営に700万ドル(約10億3800万円)を集めた。このように、多額の資金の調達源であることに加えて、別の理由も考えられる。
それは、金融の知識が豊富なベッセントを個人的な金融アドバイザーとして手元に置き続けたいというトランプの願いである。ただ、今後の関係は不透明だ。
