2025年12月5日(金)

日本のコンテンツ

2025年9月14日

 KOCCAは毎年の年末に、その年のコンテンツ産業の動向を総括するとともに、翌年に向けた展望を提示する。また、コンテンツ業界の企業やクリエーターに向けて、戦略的な情報発信を行い、それに基づいた事業計画案や支援予算も公表する。たとえば今年は、「起業支援と育成」「専門人材の育成」「海外進出支援」など、7つの重点事業に基づく具体的な施策を発表している。

韓国が立てている戦略と
文化政策の「あるべき姿」

 中でも注目を集めているのが、グローバル戦略「H.I.P」である。「H.I.P」とは、超現地化(Hyper-localization)、知的財産(IP)関連産業(IP-Connected Industry)、海外販路開拓(Pioneer)の頭文字を取ったもので、これらを柱としたグローバル市場攻略のための戦略を指す。

 KOCCAはこの戦略について、「各国の文化や消費者ニーズを深く理解する〝超現地化〟を通じて、コンテンツIPを中心に多様な産業との融合を図り、新たな価値を創出する」と説明している。

 こうした海外展開を支えているのが、KOCCAが展開する海外拠点である。現在、米国のロサンゼルスや英国のロンドンなど世界各地に25カ所の拠点が設置されており、さらに今年下半期には新たにサウジアラビアのリヤドやチリのサンティアゴなど5カ所の追加開設が予定されている。これらの海外拠点の役割は、韓国のコンテンツ企業やクリエーターを一方的に進出させることではない。むしろ、現地産業との協業体制を構築し、双方向的なコミュニケーションを促進すること、展開する地域ごとに戦略をローカライズすることに重点が置かれている。

 もう一つの重要なポイントは、無形の創作物をいかに商品として成立させるかという課題である。ここには、官民が連携して推進するコンテンツ戦略の姿が如実に表れている。

 その代表的な取り組みが、12年にスタートした「コンテンツ創意人材同伴事業」である。この事業では、ジャンルを問わずコンテンツ制作に関わる人を対象に、6~7カ月間にわたって実践的なプログラムを展開する。現場で活躍する100人以上の専門家(メンター)が、約300人の創意教育生(メンティ)に対して、実務に即したメンタリングを行う。また、参加しているクリエーターには、毎月補助金も支給される。

 この施策の目的は、単なる人材育成に留まらない。大学や業界団体、コンテンツ企業が自ら人材育成に取り組むことでそれぞれの競争力を高め、雇用創出にもつなげることが期待されている。国家が単に補助金を分配するのではなく、中小コンテンツ企業の自立を後押しし、新たな雇用を生み出すとともに、業界内のネットワークを広げ、産業基盤を強化することが真の目的なのだ。これこそが、本来あるべき文化政策の姿ではないだろうか。


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