日本の伝統芸能の中で、歌舞伎というジャンルは継承ができているかというと、比較的成功している方であろう。何よりも、松竹という上場企業がほぼ100%運営しており、採算ベースに乗せる中で、歌舞伎座を中心に全国各地での公演を続けているからだ。興行の性格上、コロナ禍では大きな痛手を被ったものの、客足は戻っている。
けれども、興行に勢いがあるかというと、全く十分ではない。松竹の歌舞伎に関する興行は本拠地である歌舞伎座では、90%程度はチケットが売れているようだが、歌舞伎全体では、大きく集客力を減らしている。本拠地の一つであった国立劇場が老朽化で閉館し、建て替えの難航状態が続いているだけでなく、大阪における松竹歌舞伎の本拠「松竹座」も閉館が決まった。
例えば江戸文化の継承ということで言えば、大相撲に関しては年間90日の本場所に加えて、地方巡業の多くも大盛況でチケットが争奪戦になる活況を呈している。スポーツである大相撲と、舞台芸術の歌舞伎では性格は異なるとはいえ、歌舞伎の勢いにはやや寂しさを感じざるを得ない。
そんな中、歌舞伎役者の人生、とりわけ芸の道の厳しさを描いた映画『国宝』が大ヒットしている。興行収入は110億円を超え、実写邦画では歴代2位となったというのであるから、大成功であるし既に社会現象となっている。この映画をきっかけに歌舞伎への興味関心が高まることもが期待される。
では、具体的にどうしたら歌舞伎の巻き返しを実現できるのだろうか。ズバリ即効性があるのは、ネット、とりわけYouTubeの利用だ。
