世界的に知られる日本の俳優は今、誰だろうか。『PERFECT DAYS』(ヴィム・ヴェンダーズ監督、2023年)でカンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞した役所広司か、あるいはヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞した『スパイの妻』(黒沢清監督、20年)で主人公を演じた高橋一生か……。
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞かつ米アカデミー名誉賞(外国語映画賞)の『羅生門』(黒澤明監督、50年)やヴェネチア国際映画祭銀獅子賞の『七人の侍』(黒澤明監督、54年)などで主役を演じて「国際的スター」と呼ばれた三船敏郎や、『羅生門』と『雨月物語』(53年、ヴェネチア)、『地獄門』(54年、カンヌ)の世界三大映画祭で受賞した作品に出演し「グランプリ女優」と称賛された京マチ子がかつてはいた。
米アカデミー賞やエミー賞、三大映画祭の名声が衰えたわけではない。しかし、今、NetflixやAmazonPrimeビデオ、Hulu、ディズニー+などの配信ドラマに出演することが、俳優の勲章になってきた。真田広之が主演とプロデューサーを務めて、ディズニー+が配信した『SHOGUN 将軍』(24年)は、ここではちょっと脇におこう。
ドラマ・映画配信のプラットフォームの中では、Netflixが圧倒的な地位を占めている。24年末には世界で約3億人の会員を誇り、日本でも加入者が1000万人を超えている。
自社制作の拠点として、ロサンゼルスに次いで構えたのは日本だった。世界で約30カ所の拠点では、本社から自由に制作を進めるローカリゼーションが基本的に貫徹している。
日本制作のドラマとしては、9月からseason3の配信が始まる『今際の国のアリス』(season1は2020年、season2は22年)は、世界の視聴時間が2億時間を超える大ヒットとなった。『シティーハンター』(24年)『地面師たち』(同)『幽☆遊☆白書』(23年)『First Love 初恋』(22年)…世界各国の視聴時間のトップ10に入った作品は多い。
前置きが長くなった。7月末から配信が始まったNetflix『グラスハート』(全10話)である。日本制作のドラマとして、先に挙げた作品を上回る視聴時間とランキングを獲得するだろう。つまり、国内のテレビドラマを大きくしのぐことになる。
