チーム医療の
司令塔としての役割
多様な専門職が関わる高度な医療現場において、総合診療医はその連携と調整を担い、チーム医療の中核として医療の質そのものに影響を与えている。
新型コロナウイルスのパンデミックはまさに総合診療医がその力を発揮した局面だった。診断のつけられない病気の検査や入院調整など、状況に応じて柔軟かつ横断的なマネジメントが求められた。医師をはじめ看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーやリハビリスタッフなど多様な専門職と協働し、一人ひとりの患者を院内外の医療リソースへ適切に導くハブとなっていた。
情報共有や院内感染対策の調整役としても活動し、専門診療科が専門性に集中できるよう環境を整える努力をした。こうした機能は医療現場の混乱を最小限に抑え、危機下でも包括的かつ持続可能な医療提供体制の維持に大きく貢献したといえるだろう。
このような〝司令塔〟としての機能があってこそ、大学病院という巨大な組織が、真に「一つの医療チーム」として機能し、患者さんにとって意味ある医療を届けることができると考えている。
私が診療において何より大切にしているのは、「学び続け、寄り添う姿勢」である。医学は常に進歩しており、総合診療医には広範な知識と柔軟な判断力が求められる。「これは何だろう」と感じた時にはすぐに調べ、必要に応じて専門医に相談する、原因不明の体調不良で悩んでいる患者さんに寄り添い、読み解く。そうした真摯な姿勢が、患者さんやスタッフとの信頼関係を育てていく。
これからの日本では、超高齢化と慢性疾患の増加により、より複雑な医療が求められるだろう。そうした中で、〝人をまるごと診る〟総合診療の視点は、特別なものではなく、むしろ医療の〝標準〟になるべきではないかと私は考えている。
大学病院という高度な医療の現場から、総合診療の意義を広く伝えていく─それが私の使命だ。そして、「幸せなおじいちゃん、おばあちゃんになろう」という思いを胸に、信頼される医療をこれからも目指していきたい。
