2025年12月5日(金)

家庭医の日常

2025年8月3日

病気や症状、生活環境がそれぞれ異なる患者の相談に対し、患者の心身や生活すべてを診る家庭医がどのように診察して、健康を改善させていくか。患者とのやり取りを通じてその日常を伝える。
(wildpixel/gettyimages)

<本日の患者>
K.Y.さん、75歳、男性、元古書店主。

 「あの時は『えっ、シンボウサイドウ?!』って先生の前で叫んじゃいましたよね」

 「そうでした。まだK.Y.さんのお店も新しかった」

 「新しい古本屋なんておかしいよね(笑)」

 K.Y.さんは、この町では珍しい古書店の店主だった人だ。5年前に店を息子さんに託して引退し、好きな本を読みながら悠々自適の暮らしをしている。

 私が働く家庭医診療所とは、もうかれこれ20年の付き合いである。最初は高血圧があって通院していたが、8年前のある定期受診の時に心房細動が発見されたのだ。

心房細動とは

 心臓には4つの部屋(上方に左右の心房、下方に左右の心室)があり、右心房にある心臓のペースメーカーとも言うべき洞結節という部位から発生する電気信号がそれぞれの部屋へ秩序をもって伝わることによって、拡張と収縮を規則正しく繰り返している。

 心房細動は、左心房の肺静脈(左右の肺から酸素に富んだ血液を心臓へ送る合計4本の血管)がつながる部位近くから秩序の無い電気信号が発生することによって起きる不整脈である。両方の心房が小刻みに震えたようになり、心室の収縮も統制を欠いて不規則となる。原因はまだ完全にわかっておらず、おそらく多因子が関わっている。

 心房細動がある患者の約50%から87%は無症状で、健康診断や他の検査で偶然見つかることもある。症状がある場合(約3分の1)には動悸が最も多く、その他、息切れ、疲れやすさ、めまい、胸の痛みや圧迫感などがある。心房細動によって非常に速い心拍が引き起こされると、血液の流れが不安定になり、失神、低血圧、心不全、心筋虚血などを起こすことがある。

 臨床研究で確認されている心房細動のリスク要因には、次のものが含まれる。治療できるものは治療し、修正が可能なものについては普段から生活習慣の改善に取り組むことで、発症や再発のリスクを下げることができる。

加齢、男性、家族での発症、無症候性甲状腺機能亢進症、アルコール多飲、薬剤(鎮痛薬、オピオイド、ステロイド、降圧薬など)、肥満、運動不足、過労、喫煙、高血圧、心筋梗塞、心不全、糖尿病、起立性低血圧、閉塞性睡眠時無呼吸、慢性関節リウマチ

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