2025年12月6日(土)

家庭医の日常

2025年8月3日

心房細動が見つかったらどうするか

 実際に心房細動を疑って家庭医を受診したらどうなるか。もちろん、その時の状態では緊急処置が必要なこともあるが、ある程度時間がある場合には、心房細動のリスク要因も考慮した生活習慣を含めた問診と身体診察から始まり、心電図検査をして不整脈が心房細動であるかを確認するのが最も一般的だ。

 初回の検査としては、血液検査で電解質、貧血、甲状腺機能、腎・肝機能などと心エコー(超音波検査)で心臓の構造と機能をチェックし、原因となる特定の疾患がないかを調べる。

 検査と同時進行で、心房細動のために血栓が出来て脳梗塞を起こすリスクを見積もり、リスクが高い場合には主として薬剤を用いた予防策(抗凝固療法)を講ずる必要がある。

 心房細動という不整脈自体への対応には、2つのアプローチがある。心拍数の制御(レートコントロール)とリズムの回復(リズムコントロール)だ。

 心房細動では心臓の拍動が速くなることも多く、動悸、息苦しさや心臓への負担が増えるため、心拍数を落ち着かせるレートコントロールが必要になる。β遮断薬、カルシウム拮抗薬、ジギタリスなどの薬剤が使われる。

 他方、場合によっては心房細動を正常なリズム(洞調律と呼ぶ)に戻す治療も検討される。方法は主に2つで、電気的カルディオバージョン(電気ショックをかけて正常なリズムに戻す方法で、緊急処置として使われることもある)と、カテーテルアブレーション(血管を通して心臓の中に細い管[カテーテル]を挿入して、異常が起きやすい部位に高周波や冷気処置をして電気的に遮断する)がある。リズムコントロールは、強い症状がある場合や薬剤が合わない人、長期的な洞調律の維持を希望する人に検討される。

 これらの治療法は、家庭医が自ら行うのではなく、その分野の専門家に依頼して相談しながら進めていく。

 日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン『2024年版 JCS/JHRS ガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療』は、従来作られていた不整脈についての薬物治療と非薬物治療それぞれのガイドラインを合体させたものである。最近の非薬物治療(特に植込み型心臓電気デバイスとカテーテルアブレーション)の「驚異的な」発展の速さに対応することを目指していて、最新の臨床研究のエビデンスが評価とともに整理して掲載されている。家庭医が患者のマネジメントについて不整脈治療専門家と相談する際にもとても参考になる。

出血と凝固のあいだ

 人体には2つの機能が絶妙なバランスをとっている仕組みがいくつかある。例えば2種類の自律神経である交感神経と副交感神経。交感神経は活動時に優位になり、心拍数や呼吸数を上げ、血管を収縮させ、血圧を上げ、筋肉への血流を増やし、消化を抑制する。

 一方、副交感神経は休息時に優位になり、心拍数や呼吸数を下げ、血管を拡張させ、血圧を下げ、消化を促進し、身体を回復させる。両者がバランスよく機能することで心身の健康が維持される。

 もう一つの例が、今回のトピックに強く関連する血液が固まる機能(凝固と呼ぶ)と固まった血液を溶かす機能(線溶と呼ぶ)だ。


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