2025年6月17日(火)

家庭医の日常

2025年5月25日

病気や症状、生活環境がそれぞれ異なる患者の相談に対し、患者の心身や生活すべてを診る家庭医がどのように診察して、健康を改善させていくか。患者とのやり取りを通じてその日常を伝える。
(Staras/gettyimages)

<本日の患者>
S.D.さん、36歳、女性、百貨店販売員。
T.D.さん、39歳、男性、S.D.さんの夫、百貨店マネージャー。

 「先生、シー・オー・ピー・ディーって何ですか」

 「えっ?ああ、COPD、慢性閉塞性肺疾患ですね。どうしてそれを聞いてみようと思ったんですか」

 「夫が会社の健診で保健師さんからそのシー・オーなんとかに『注意して下さい』って言われたので、もっと詳しく知りたいそうなんです」

 「そうでしたか。S.D.さんはタバコは吸わなかったですよね。T.D.さんはどうですか」

 「家の中ではやめてもらってるんですが、外へ出て吸うんです彼」

 S.D.さんとT.D.さんの夫婦は、1年前にこの町にある百貨店へ転勤となった。S.D.さんに花粉症と月経前症候群があり、私のいる家庭医診療所に通院している。2人に子どもはいない。

 上記のやり取りはS.D.さんの先月の定期受診でのもので、私はその疾患についての基本的な情報をプリントして彼女に渡し、夫婦でそれを読んできてもらって、質問に答えたり、詳しく説明したりする機会を設けることを提案したのだった。今日は2人で受診予約をしてくれている。

COPDとは何か

 慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease; COPD)は、呼吸困難を引き起こす一群の肺疾患の総称である。主に喫煙歴のある中高年に多くみられる一般的な疾患である。

 後から詳しく説明するように、COPDはかなり多くの人が罹患しているにもかかわらず、知名度が低い。多くの人は自分がCOPDにかかっていることに気づいていない。だが、呼吸症状は時間の経過とともに悪化する傾向があり、日常生活に支障をきたすことさえある。


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