大統領室は国民任命式を開いた目的について、「国民とともにする『国民主権大祭』として準備した」と明かしている。だが、招待された歴代大統領で出席したのは文在寅氏だけで、李明博と朴槿恵の両氏は欠席し、保守系野党「国民の力」も「セルフ戴冠式」と批判してボイコットした。
このように李大統領が初めて取り入れた国民任命式は、同氏が掲げる「国民統合」をアピールする場になるはずだったが、保守派の立場からは批判も多く、政治的分断がいまだ癒されていないことを見せつける形になった。
他方で、解放80周年・日韓国交正常化60周年という定周年に国民任命式を当てこむことで、民族主義的な動きの高潮を抑えたとも言える。そういう発想があったとすれば、まさに「実用主義」の発露であり、先見の明と言えるだろう。
米韓連合演習の実像
今週の国防日報は、8月18日から28日まで行われる米韓連合演習「2025 UFS(Ulchi Freedom Shield/乙支自由の盾)」に関する内容で埋め尽くされた。そもそもUFSは、1954年から国連軍主管で行われてきた「Focus Lens」演習と、68年1月に起こった北朝鮮武装工作員による大統領府奇襲事件を発端に始まった韓国政府主観の軍事支援訓練「乙支訓練」が統合されたもの。
そのため、毎年上半期に実施される「Freedom Shield(自由の盾)」演習に比べ、軍・官・民が連携した「統合防衛」に注力されている。ちなみに、乙支とは高句麗の武将で民族の英雄である乙支文徳から来ており、その名前は韓国海軍の駆逐艦にも付けられている。
19日のヘッドラインにある「乙支国務会議」とは、国家非常事態等に招集される閣議を指す。日本でも緊急な重要案件に対応するための臨時閣議があるが、韓国の場合は国防問題への対応に特化して開かれている。このように北朝鮮と対峙する韓国では、国防に関する様々なシステムが整備されている。
22日のヘッドラインにある「戦時指揮所B-1バンカー文書庫」もその一つで、これは韓国に複数存在する戦時指揮所(バンカー)のことで、ソウル南部の山腹に存在する。バンカーに文書庫が置かれるのは、行政文書など国家の正統性を裏付ける資料を保管するためだ。
