2025年12月5日(金)

韓国軍機関紙『国防日報』で追う

2025年7月8日

 デジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれて久しいが、韓国では軍の出版部門が韓国軍版Google マップを作るほどの大変革を起こしている。また、李在明政権で初めての防衛産業の大型輸出案件である、K2戦車のポーランド向け2次輸出協議が成功裡に終了した。李大統領は尹政権の精算に注力しているが、防衛産業を国家的な輸出産業とする政策は引き継いでいる。

韓国軍の出版部門がデジタルコンテンツ制作

 7月1日ヘッドライン「体感コンテンツで制限された訓練環境を克服」は、国防出版支援団(出版団)が今年初めに「体感コンテンツ」専門部署を立ち上げ、全軍の情報・作戦・訓練分野で利用できる「PC基盤シミュレーションコンテンツ」の試作品を制作したことを伝えた。

 出版団とは、教範などを出版する国防部長官の直轄組織。記事が伝えたような情報・作戦・訓練で使用できるシステムの開発は、国防科学研究所(ADD)が担当するはずだ。なぜ、出版団がこのようなコンテンツを制作したのだろうか。

 まずは、体感コンテンツの中身を見てみよう。同コンテンツは、アクセス困難な敵地域や安全上の懸念がある地域での訓練課題を解決するために開発された。一般的に体感コンテンツとは、装着型ディスプレイを使用した仮想現実(VR)や拡張現実(AR)を意味するが、これら装備は部隊に普及していないため、PC基盤シミュレーションコンテンツに特化したという。

 記事は「(PCに表示された)敵地域の仮装地図で指定目標をクリックしたり、キーボードを使ったりした訓練が可能」と詳細を明かしていない。想像するに、Google マップやGoogle アースの韓国軍版で、北朝鮮の建物や道路の名称などを表示できるGIS(地理情報システム)の一種だろう。出版団は現在、模擬訓練システムとM&S(モデリング・シミュレーション)に必要な3Dモデルを統合管理する「共用3Dモデルデータベース」の構築を進めているというので、筆者の見立てはそう遠くないはずだ。

 このような出版団は、2009年に陸・海・空軍印刷廠を統合した「国軍印刷廠」として創設され、21年に現在の名称に変更された。当初は紙媒体の出版が主要業務であったが、大々的なDXを行ってデジタルコンテンツ制作を推進しているという。


新着記事

»もっと見る