韓国の李在明大統領の〝英断〟で北朝鮮向け宣伝を行う大型スピーカーが撤去され、38度線沿いに平穏な空気が流れ始めたと思いきや、米韓両軍は連合演習「2025 UFS(乙支フリーダムシールド)」を8月下旬から実施することを発表した。北朝鮮が兼ねてから「戦争挑発」などと強く非難してきた連合演習が実施されることで、朝鮮半島は再び緊張関係に陥るのか。
南北の緊張緩和はいつまで続くのか?
8月5日のヘッドラインは、韓国軍が38度線沿いに設置していた、北朝鮮向け心理戦用の大型スピーカーを撤去したことを報じたもの。日本人の感覚では、そんなモノが役に立つのかと疑問に思うかもしれないが、実は非常にコスパが高い作戦だった。
固定式の大型スピーカーから行われる放送は、日中は約10キロメートル(km)、夜間は20km以上まで到達し、前線で勤務する北朝鮮兵や開城市など38度線付近の住民を対象にしていた。放送は、K-POPやニュースで自由な韓国に憧れを抱かせる内容、金正恩一族の贅沢な暮らしぶりを知らせる内容がメインで、韓国に脱北した兵士の体験談や故郷へのメッセージなども含まれていた。また、北朝鮮の兵士や住民が放送を聞くようにするため、天気予報を流すなど工夫されていた。
このような内容の放送は、兵士や住民の心の中にじわじわと浸透していき、脱北者や体制への不満を生み出すに至った。
では、なぜ高コスパのソフトパワー兵器を撤去するに至ったのか。そこには南北関係だけではなく、韓国の政権交代も影響しているので、少し解説が必要だろう。

