2025年12月6日(土)

モノ語り。

2025年9月7日

 工程を簡単に記すと次のようになります。①木材パルプからつくられるアセテートという樹脂の色、柄を選ぶ。②短冊形に樹脂を切る。③玉形(レンズ)の形に削り出す。④フロントのカーブ、鼻パッドの取り付け。⑤レンズの溝付け。⑥磨き。⑦丁番(ヒンジ)、レンズの取り付け。

 「工場から出荷するときは、まだ半製品です。最後は、お店でお客さんにフィットするよう調整してもらって〝完成品〟になります」(牧野さん)

作っている人たちの顔が見える

 伊部眼鏡社長の伊部敏一さんに、磨きや飾りの取り付け作業を見せて頂きました。まずは「泥バフ」と呼ばれる工程です。

 「あいくち(フロントとテンプルの合わさる部分)を滑らかにするために、泥を使って磨いていきます。使っている泥は『房州粉』と呼ばれる、石を削ったときに出る粉末です。それから洗浄して、艶磨きを行います」(伊部さん)

NOCHINO OPTICALのシグネチャーモデル 「NOCHINO」

 手間のかかる作業ですが、輝きを増した眼鏡は本当に美しく見えます。

 それ以上に驚かされたのは、飾りつけの作業でした。シグネチャーモデル「NOCHINO」のフロントとテンプルには、菱形の飾りが入っています。ただ、その飾りをつくっている会社が1社しかなくなり、注文すると半年もかかってしまうようになったそうです。そこで、廃業した会社から飾りをつくるプレス機を譲ってもらい、自社でつくるようにしたのです。

 この道65年という伊部さんの父・幹雄さんが、つくった飾りをフロントに、加締める様子を見せてくれました。その機械も、幹雄さんがこの仕事を始めて以来、使っているものだそうです。

 ここまで見せて頂いて、もう一つの今野さんのメッセージについても腑に落ちました。

 「大切に長く使って頂きたいと願うブランドのアイデンティティ」

 つくっている方々の顔が見えると大事に使いたくなるものです。私が今回選んだ「NOCHINO」には、調光レンズを入れて頂きました。紫外線を浴びるとサングラスになり、室内に入ると透明になるという優れもので、普段使いからビジネスシーンでも使用できる逸品です。

NOCHINO OPTICAL 南青山本店 東京都港区南青山6丁目2-2 南青山ホームズ 108A 03-6421-0869
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Wedge 2025年9月号より
日本の医療は誰のものか
日本の医療は誰のものか

日本の医療が崩壊の危機に瀕している。国民皆保険制度により私たちは「いつでも、誰でも、どこでも」安心して医療を受けることができるようになった。一方、全国各地で医師の偏在が起こり、経営状況の悪化から病院の統廃合が進むなど、従来通りの医療提供体制を持続させることが困難な時代になりつつある。日本の医療は誰のものか─。今こそ、真剣に考えたい。


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