工程を簡単に記すと次のようになります。①木材パルプからつくられるアセテートという樹脂の色、柄を選ぶ。②短冊形に樹脂を切る。③玉形(レンズ)の形に削り出す。④フロントのカーブ、鼻パッドの取り付け。⑤レンズの溝付け。⑥磨き。⑦丁番(ヒンジ)、レンズの取り付け。
「工場から出荷するときは、まだ半製品です。最後は、お店でお客さんにフィットするよう調整してもらって〝完成品〟になります」(牧野さん)
作っている人たちの顔が見える
伊部眼鏡社長の伊部敏一さんに、磨きや飾りの取り付け作業を見せて頂きました。まずは「泥バフ」と呼ばれる工程です。
「あいくち(フロントとテンプルの合わさる部分)を滑らかにするために、泥を使って磨いていきます。使っている泥は『房州粉』と呼ばれる、石を削ったときに出る粉末です。それから洗浄して、艶磨きを行います」(伊部さん)
手間のかかる作業ですが、輝きを増した眼鏡は本当に美しく見えます。
それ以上に驚かされたのは、飾りつけの作業でした。シグネチャーモデル「NOCHINO」のフロントとテンプルには、菱形の飾りが入っています。ただ、その飾りをつくっている会社が1社しかなくなり、注文すると半年もかかってしまうようになったそうです。そこで、廃業した会社から飾りをつくるプレス機を譲ってもらい、自社でつくるようにしたのです。
この道65年という伊部さんの父・幹雄さんが、つくった飾りをフロントに、加締める様子を見せてくれました。その機械も、幹雄さんがこの仕事を始めて以来、使っているものだそうです。
ここまで見せて頂いて、もう一つの今野さんのメッセージについても腑に落ちました。
「大切に長く使って頂きたいと願うブランドのアイデンティティ」
つくっている方々の顔が見えると大事に使いたくなるものです。私が今回選んだ「NOCHINO」には、調光レンズを入れて頂きました。紫外線を浴びるとサングラスになり、室内に入ると透明になるという優れもので、普段使いからビジネスシーンでも使用できる逸品です。
