2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年5月30日

 最後に、米国は、中国との建設的な関係作りを継続しなければならない。アジア回帰は、中国封じ込めという人もいるが、5000億ドルの経済関係は封じ込めではない。米国は、アジアで安定、経済開放、紛争の平和解決、人権尊重を推進してきたが、これは中国の台頭に良い環境である。この環境維持のために、米国は強い軍事力を持ち、対中対話をし、武力行使、威嚇、強制に反対している。こういう原則を堅持することで、米国は、アジアの21世紀が紛争ではなく安全保障と繁栄で定義されることを助け得る、と述べています。

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 上記は、アジア回帰(リバランス)政策の立案の中心にいたドニロンの解説です。オバマ政権のアジア重視政策が、政権発足当時から検討され、着実に実施されてきたものであることを言っています。日本としては、この米国の姿勢を歓迎し、その成功を応援すべきでしょう。

 日本としてなすべきことは、中国が国際ルールを守るように、抑止を効果あるものにし、必要なインセンティブを与えることでしょう。そのためには、日米協力を万全のものにし、日本の防衛力も可能な範囲で法的にも資源面でも強めて行く必要があります。米国のアジア回帰を当てに、こういう努力をさぼってはいけません。

 また、TPPについては、それができた場合の戦略的影響を評価して、個別利益に振り回されず、物事の軽重をよく考えて、日米交渉の妥結に努力すべきでしょう。

 ドニロンは、中国の台頭は米国が作った秩序・環境の中でできたし、その維持は中国にも利益になると強調していますが、中国は、ドニロンの言うようには考えていません。米国との協力よりも米国との競争を優先している兆候は随所にあります。もっと冷徹な中国分析に基づき、望ましいことと現実の状況を混同せずに物事を考えることが必要だと思います。

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