2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年9月17日

 少数意見は、「議会はトランプの世界的な関税政策のような広範な行動への道を開いたのだ」、「IEEPAはこの外交の領域における広い緊急権限の議会による目を見開かされるような付与を体現しており、当然ながら、それは非緊急時の法の下における権限を超えるものである」と言う。

 トランプ政権は、貿易赤字に言及して、IEEPAは国家の緊急事態において輸入を規制するため大統領に関税を広く使う権限を与えていると言っている。判決に先立ち、トランプ政権側は、欧州連合(EU)、インドネシア、フィリピン、日本との合意を指摘して大統領に反対する判決は「壊滅的影響」を持つと警告する書簡を連邦控訴裁に送った。

 「米国は諸外国が支払うことを既にコミットした数兆ドルを払い戻すことは出来ない、払い戻しは財政破綻に至るであろう」「大統領は合意の強制的解消は1929年型の大暴落に至るだろうと信じている」とも書いている。

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明快な論理

 8月29日、連邦控訴裁は5月28日の国際貿易裁判所の判決を支持し、IEEPAを根拠とするトランプ関税は違法とする判決を下した。

 その論理は明快である。国民に関税のような税を課す権限は唯一議会に属するというのが憲法の仕組みであり、大統領が関税を課すには議会による委任を要する、しかるに、グローバルに手当たり次第関税を課す無制限な権限を大統領に与える規定はIEEPAには見当たらないということである。少数意見は、まさしくその種の権限を緊急事態において大統領に与えているのがIEEPAだと主張しているようである。

 問題は、最高裁がどういう判断を示すかである。一体、トランプ関税という出鱈目をどうやって終わらせることが出来るのかという問題があるが、最高裁の行動がそのための唯一の機会となろう。


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