トランプ大統領の関税政策について、8月29日、連邦控訴裁が大統領は国際緊急経済権限法(IEEPA)の下における権限を逸脱したと判断し、関税は違法との判決を下した。ここでは、各紙報道の中からウォールストリート・ジャーナル紙の解説記事を取り上げご紹介する。
8月29日、連邦控訴裁は、大統領は米国の関税政策を作り替えるために緊急権限を行使するに当たり、その権限を逸脱したとして、トランプ政権の関税を違法とした。
連邦控訴裁は7対4の多数意見で下級審の決定を支持した。多数意見は、大統領は1977年のIEEPAの下における権限を逸脱したと判断した。
この判決はトランプの二期目の政権の目玉政策に対する重大な打撃であり、事案が最高裁に付託されるお膳立てが整うこととなった。連邦控訴裁は、当事者が最高裁の審理を求める間、関税が10月中旬までそのまま維持されることを認めた。
トランプが課した相互関税は、シンクタンクTax Foundationの推計によれば、2026年の予想される関税収入の約70%を占める。しかし、トランプ政権は、控訴審の判決には影響されない他の権限を使ってさらなる関税の強化を計画している。
控訴審の判決で違法とされた関税は、ほとんどすべての諸国に対する10%の一律関税、およびタチの悪い貿易相手国と見做された諸国に対するさらに高率の関税を含む。その他、カナダ、中国、メキシコに対する追加的な関税がある。
控訴審の判決は、安全保障に関する別の権限に基づく自動車、鉄鋼、アルミ、銅に対する関税には影響しない。控訴審の判決が最高裁で維持される場合に備えて、トランプ政権はこの権限に基づく関税の対象を拡大しようとしている。
控訴審の多数意見は、「IEEPAは国家緊急事態に対応して数多くの行動を取る重要な権限を大統領に与えているが、それらの行動のいずれも関税またはその他同種のものを課す権限、あるいは税金を課す権限を明示的に含んでいない」、「IEEPAのどこにも『関税』やその同義語は見当たらない」と述べている。
多数意見は「議会が大統領に関税を課す権限を委任することを意図していれば、明示的に委任するはずである」、「何故なら、関税のような税金を課す議会の中核的権限は憲法によって排他的に立法府に与えられているからである」と述べている。
