2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年9月17日

最高裁は相当な覚悟が必要

 最高裁の行動を楽観視できない理由には3つあるらしい。

 第一に、最高裁が行政権限を広く解釈する傾向にあることである。最高裁が大統領の行動の免責特権を広く認める判決を出したのはその顕著な例であるが、ここでの問題は議会と行政府との間の権限の線引きにあり、そうであれば、判断は自ずと異なることになるのではないか?

 第二に、最高裁が外交の領域に立ち入ることを躊躇する傾向にあることである。この記事によれば、トランプ政権が連邦控訴裁に宛てた書簡が諸外国との関税交渉に言及しているのも、外交を前面に出して牽制する思惑によるものであろう。しかし、外交といっても問題は国民に対する課税の問題である。

 第三は、トランプは敗訴しても判決に従わないのではないかとの懸念が、最高裁の行動を束縛するのではないかとの観測である。最高裁には不当に国外追放となった移民をトランプ政権に帰国させるよう強制する手段はない。しかし、関税が不法と判断されれば、その最高裁判決が実行されないことはない。何故なら、不法と判断された関税を以後支払う関係者がいるはずはなく、過去に支払った関税は取り戻すべく関係者は必要とあれば訴訟に訴えると思われるからである。

 最高裁は相当の覚悟を要するだろうが、トランプ関税を違法と判断する可能性はあるであろう。「米国は諸外国が支払うことを既にコミットした数兆ドルを払い戻すことは出来ない、払い戻しは財政破綻に至るであろう」とトランプ政権が連邦控訴裁宛の書簡に書いたとこの記事にある(ただし、関税を支払うのは「諸外国」ではない)。これは威嚇なのであろうが、トランプ政権が最悪の事態があり得ると想定していることを暗示するものかも知れない。

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