トランプ政権が打ち出す劇場型の通商政策は、日々メディアを賑わせている。ある日、突然に〝ルール〟が変わる先の見通せない状況が続いているのだが、実務を担う現場にはより深刻な混乱が広がっている。とりわけ米国の通関現場では、大統領令や関税率の見直しが相次ぎ、日々の対応を難しくしている。
急速に複雑化する輸入申告
象徴的な事例が輸入申告の細分化だ。現在、鉄鋼・アルミ・銅など品目ごとに課される「通商拡大法232条」の適用が拡大し、素材ごとに分割しての申告が必須となり、米国での輸入申告を急速に複雑化させる一つの要因となっている。
例えば延長コードを米国に輸入する際、従来は申告行数2行で処理できたが、現在は素材ごとに分割して申告することが求められ、申告行数13行にまで増加するケースも報告されている。
関税率も流動的に変更される上、業務量の激増により申告精度が損なわれ、入力ミスや計算誤りのリスクを高めている。
さらに米国税関・国境警備局(CBP)は、申告誤りに対して厳格なペナルティを科す姿勢を鮮明にしている。誤申告など過失は不足税額の2倍または商品価値の20%、重大な過失と判定されれば4倍または40%、故意による詐欺は最大で100%と、輸入貨物全額に相当する制裁金に加え、最悪の場合には刑事訴追に至る可能性もある。申告の複雑化は経営リスクに直結する深刻な課題となっている。
