対象企業は部品ごとのBOM(部品表)、サプライヤーの宣誓書、原料トレーサビリティ記録など、従来以上に緻密な証憑を提示することが求められ、不備があれば即座に差し止めや滞留につながる。トランプ関税に端を発する様々な施策の影響で、今サプライチェーンリスクは飛躍的に増しているのだ。
メキシコへも波及
通関の取り締り強化は米国内にとどまらず、メキシコにも波及しており、中国からの迂回輸出拠点とされてきた同国の役割は大きな転換点を迎えている。メキシコ・マンザニーロ港では25年7月だけで中国関連貨物900本以上が放棄され、前年同期比で3倍に急増した。
メキシコ軍の関与により税関検査率は従来の4%から25%に引き上げられ、通関遅延は7〜8日が常態化している。書類不備や偽造品だけでなく、OEMや混載貨物まで巻き添えで拘留され、訴追リスクを恐れた荷受人が放棄を選ぶ事例が相次いでいる。
さらにトランプ政権は対中政策を通じ、メキシコ政府にも圧力をかけていると言われている。実際、メキシコ政府は26年度予算案に対中関税引き上げを盛り込む検討を進めている。対象は自動車、繊維、プラスチック製品などで、現行15〜20%からの引き上げが視野に入る。
トランプ政権は一方で、メキシコへの追加30%関税の発動を10月下旬まで延期しており、両国間で交渉が続いている。メキシコ政府はこの交渉をにらみ、中国電気自動車(EV)大手比亜迪(BYD)の工場建設を白紙撤回したり、小口貨物関税を19%から33.5%に引き上げたりするなど、対中圧力を強めている。
