「物流リスク=経営リスク」の時代に
こうした混乱とリスクを前に、日本企業が直面する最大の課題は「制度の複雑化と変化の速さ」だ。関税の発効日、対象品目、例外規定はいずれも頻繁に更新され、誤った対応は高額の罰金や最悪の場合刑事責任を問われることになりかねない。
この新たな環境下で日本企業が取るべき対応は明確だ。
● 第一に、関税情報を日次でモニタリングする体制の構築。
● 第二に、原産地証明などの証憑を即座に提示できるような社内システムの構築。
● 第三に、現地サプライヤーとの連携を強化し、生産能力や原材料の供給源を可視化すること。
これらの取り組みなしに、国際市場での競争力を維持することは困難だろう。
安さを求めて最適地を選ぶ「自由貿易時代の常識」はもはや通用しない。米国の通商政策は従来の延長線上では捉えきれない新段階に入り、誤れば致命的なビジネスリスクを伴う。関税や通関リスクは物流部門だけの課題ではなく、経営レベルで「サプライチェーン全体のリスク」として捉える必要がある。
これまで日本では物流・サプライチェーンが十分に重視されてこなかったが、今や事業戦略に物流を従わせるのではなく、物流を基盤として事業を再設計する覚悟が求められている。
