歴史意識をもつことの利点
また、本書では、「日本の二十世紀の帝国主義的侵略行動」について、人口増加の加速という要因にふれている。そういう見方もあるのか、と少なからず驚いた。まさに、戦争は見る者によって異なった様相を呈するということか。
<本書の目的は、過去の諸時代がいかにして軍事力の強化を追求してきたかを回顧し、技術と、軍隊組織と、社会との三者間の均衡がどのように変遷してきたかを分析することである。そのことから直接に今日のディレンマ状況の解決策が出てくるわけではない。>
そう著者は語る。しかし、一方で、控えめに歴史家としての信念を述べてもいる。
<だがそれでも、そのことで奥行きのある視野が開け、歴史意識をもつことの利点として、一刀両断の解決策とか自暴自棄の急進主義とかがあまり魅力的には感じられなくなるだろう。>
歴史をさまざまな側面からかえりみることが、われわれを「これまでより賢明な行為への出発点」に導いてくれることを、著者同様、祈るような思いで期待するしかない。
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