中国とロシア。それぞれに周辺諸国との関係を悪化させている大国どうしが5月20日、共同声明を発表し、翌21日には天然ガス供給の大型契約に調印した。
中国国営新華社通信によると、両国は2015年を「反ファシズム戦争と中国人民抗日戦争の勝利70周年」と位置づけ、共同で記念式典を開催することで合意したという。
共同声明は「歴史の改ざんと戦後秩序の破壊に反対する」と強調しており、中国は対日関係を念頭に、歴史認識でロシアとの一致を打ち出して日本を牽制する意図があるとみられる、と東京新聞は報じている。
「歴史の改ざん」、「誤った歴史認識」。極東で国家間の緊張が高まるたびに繰り返されるこれらの言葉に、またか、とうんざりすると同時に、そもそも歴史は見る者によって異なるのでは、とあきらめにも似た気持ちになる。
一致はむずかしいにしても、決定的な衝突を避けるには少なくとも、他国や他の文化圏から歴史がどう見えているのかをたがいに知っておくことは役に立つはずだ。
私自身は歴史が得意ではないのだが、科学史や技術史なら興味をもって読める。そこで今回は科学技術の側面から「戦争の世界史」にスポットを当て、「技術と軍隊と社会」という副題のついた本書を手にとってみた。
鉄器から弾道ミサイル防衛まで
翻訳した高橋均氏によると、著者ウィリアム・H・マクニールの名前は、「歴史好きの読者には説明の必要がない」とのこと。カナダに生まれ、長年シカゴ大学で歴史学を教えた。現在は引退し、シカゴ大学名誉教授である。
『世界史』『疫病と世界史』『ヴェネツィア』などの著書があり、本書の原書は1982年に発行された。今年1月に出た上下巻の文庫本は、2002年に刀水書房から出た初訳の分冊である。
青銅器や二輪戦車、鉄器から始まって弾道ミサイル防衛にいたるまでの武器や軍隊の技術を扱うのだから、なにしろ幅広い。古代から読まなくとも、興味のある時代から読み、必要ならさかのぼるという読み方もいいかもしれない。実をいうと、私も下巻から読み始めた。