筆者にとって象徴的だったのは、中谷防衛相が歴代大統領や朝鮮戦争戦死者らを追悼する国立ソウル顕忠院を訪問したことだ。同氏は自身のHPで毎年8月15日に靖国神社を参拝すると明言している。
政治家や軍関係者が外国を訪問した際、無名戦士の墓など戦没者慰霊施設を表敬することが外交儀礼になっている。しかし、海外を訪問する日本の関係者が表敬することはあっても、海外の関係者が靖国神社や千鳥ヶ淵戦没者墓苑などを表敬することは極めて稀だ。双方の関係者が、相手国に素直に敬意を払う関係の構築が、戦後100年に向けて求められるだろう。
ハネムーン期間を終えた李在明政権の評価
9月11日に発足100日を迎えた李在明政権は、「国民と共にする先端科学技術強軍」の建設を掲げた。国防日報は「従来の軍事政策から大きく舵を切った」と評しているが、果たしてそうだろうか。
尹錫悦政権からの最も大きな変化は、南北関係において緊張緩和と信頼構築を並行する「ツートラック・アプローチ」だろう。李政権は就任直後から緊張緩和に向けた措置を行い、6月11日の対北拡声器放送中止に続き、8月には拡声器設備を完全撤去した。これにより北朝鮮の対南騒音放送が停止し、38度線付近住民の騒音被害が解消されたという。
科学技術分野では、AIの活用が本格化している。李政権は9月8日、大統領直属の国家人工知能戦略委員会(国家AI戦略委)を発足させ、「AI 3大強国入り」を宣言した。そして、軍事面では、国防部長官の政策立案を支援する「AI政策参謀」と、現場指揮官の決心を支援する「AI戦闘参謀」まで構想している。また、「50万ドローン戦士養成」計画では、来年度予算に205億ウォンを編成し、教育訓練用小型ドローン1万機以上を調達するという。
防衛産業の輸出では、ポーランドへのK2戦車輸出第2次履行契約は、65億ドル(約9兆ウォン)に達する韓国史上最大の単一契約となった。また、米軍CH-47ヘリコプターのエンジンを韓国内でMRO(保守・修理・運用)する事業も採択された。
国防日報は、李政権のこれら国防・安保政策を「平和追求と技術革新という二つの軸で展開されている」と評価しているが、客観的に見れば、日米との関係改善、AIと防衛産業への重点投資など尹政権のレガシーが評価されているに過ぎない。ハネムーン期間を終えた今、李政権の真価が問われる。
