挑戦と失敗の連続が築いた成長
ユニクロの歴史は、挑戦と失敗の連続である。1984年、広島市にオープンした一号店は「郊外型・低価格衣料専門店」という地方発の新業態に過ぎなかった。しかし柳井は早くから「世界ナンバーワンのアパレル企業になる」という壮大な志を掲げる。
90年代の全国展開で店舗網を広げ、98年にはフリースが空前の大ヒットとなった。しかしそこで満足することはなかった。成長の陰には、在庫過多や商品マンネリ化という警告がすでに見え始めていた。
01年にはニューヨーク進出を果たしたが、アメリカ市場は日本の成功モデルをそのまま受け入れはしなかった。サイズ感、気候、ライフスタイル、すべてが壁となり、多くの店舗を閉鎖する結果に終わる。
ロンドンでも苦戦は続いた。さらに中国市場でも、消費者ニーズや流通環境、品質管理など、数え切れない試練が待っていた。
国内でも挑戦と失敗はあった。ファミリー向けの「ファミクロ」、スポーツウエアの「スポクロ」、さらには野菜販売など、新規事業は思うように伸びず、撤退を余儀なくされることもあった。
しかし柳井は、これらの失敗を次の改善の糧として活かした。撤退や失敗は単なる損失ではない。学びと改良の種なのだ。この哲学こそが、ユニクロを真のグローバルブランドに育て上げた。
柳井自身が著書『一勝九敗』で語ったとおり、「九回挑戦して九回失敗しても、一度成功すればいい」のだ。失敗の蓄積が次の成功を呼ぶ。この信念は社内文化として定着し、挑戦と失敗を恐れぬ組織をつくった。まさに「CHANGE OR DIE」という言葉は、挑戦の必要条件を凝縮したものである。
さらに、ファーストリテイリングが挑戦を続けられる理由には、単なる利益追求ではない確固たる事業理念がある。「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」――。このステートメントは、ユニクロという企業が社会に何を成し遂げるのかを明確に示す羅針盤である。
理念があるからこそ、失敗やリスクを恐れず、社員全員が挑戦に踏み出せる。理念がなければ挑戦は単なる博打にすぎない。あなたの会社や組織にも、揺るぎない理念はあるだろうか?
