2025年12月6日(土)

食の「危険」情報の真実

2025年10月17日

 ところが、米国では遺伝子組み換え大豆が大量に流通しているため、たとえ日本の事業者が非組み換え大豆を輸入したとしても、トラックや船による輸送のどこかで組み換え大豆が混じってしまう問題が生じていた。国の表示制度では、組み換え原料の混入割合が5%以下であれば、事業者は任意で「組み換えではない」と表示できるようになっているが、10年ほど前から、「組み換え原料が混じっているのに『組み換えではない』と表示できるのは消費者を欺く行為だ」との指摘が消費者団体から出てきた。

 そういう議論を経て、消費者庁は23年4月から、「組み換えではない」と表示できるのは「検査で検出されない(不検出)場合に限る」という厳しい条件に表示ルールを変えた。

流通実態は変わらず

 このルール変更で登場したのが「分別生産流通管理済」や「遺伝子組換え混入防止管理済」といった表示だ。

 国産100%の大豆なら、海外産の組み換え大豆が混じる可能性は低く、「組み換えではない」と表示してもよさそうに見える。だが、スーパーで豆腐や納豆の商品を見て回っても、「北海道産大豆100%」や「九州産100%」の豆腐にも「組み換えではない」との文字は見られず、「分別生産流通管理済み」や「遺伝子組換え混入防止管理済み」の表示が記されている。

 たとえ国産でも万が一、組み換え原料が混じっていたら、法律違反となり、販売禁止の措置を受ける。そうしたリスクを避けるため、どの事業者も「組み換えではない」との表示をやめたと考えられる。

 遺伝子組み換え作物の輸入や流通実態は以前と変わっていないが、「組み換えではない」という表示だけが激減したというわけだ。

分別生産流通管理には多額のコスト

 こうした「組み換えでない」表示の激減に危機感を抱くのが、遺伝子組み換え食品に反対している一部の市民団体だ。生協組合員などで組織する市民団体「たねと食とひと@フォーラム」(英語標記 Non GM Seed Forum)は「組み換えでない」表示が減っていく現状を2年前から調査している。

 24年度の調査では遺伝子組み換えに関する表示のある食品294件のうち、61件(約21%)で「組み換えではない」との表示があったが、前年(約24%)よりも減っているという。同団体は「組み換えでない表示は今後さらに市場から消えると思われます」と述べ、今年も調査を継続している。

 組み換えと非組み換えを分別するためには生産・輸送・流通の段階で多額のコストがかかるだけに、同団体は、コストのかかる分別生産流通管理をやめる事業者が出てくることを心配しているようだ。(「たねと食とひと@フォーラム」ホームページ参照)。


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