黒字の内訳はこうだ。入場券が200億円、グッズ販売などが30億円。さらに1160億円と見込んでいた運営費が、最大50億円抑えられる可能性があるという。万博は運営費が当初計画の約1.4倍に膨らみ、赤字の懸念もあったが、愛知万博の129億円を超える利益水準となる見込みだ。
この日の記者会見で、協会の十倉雅和会長(経団連名誉会長)は「会場の安全・安心に努めた結果、好評で多くの人に来ていただいたことに尽きる。ミャクミャクグッズも寄与した」と語っている。
予想もしなかった人気ぶり
万博関係者にとって、まさにミャクミャク様様だが、ここまでの人気者になるとは想像されていなかった。振り返るとキャラのデザインは一般公募され、応募のあった1898作品から、「ドラゴンクエスト」の生みの親である堀井雄二氏やタレントの中川翔子氏らの選考委員会が22年3月に3案の中から決定した。
デザイナーの山下浩平氏によるキャラは、独特の容姿から当初は「気味が悪い」などさんざんな言われようだった。デザインは、細胞をイメージした赤い楕円が連なる奇抜な万博ロゴマークを使い、「水の都」大阪にちなみ水を組み合わせたものだ。
愛称も公募で、3万3197作品の中から、万博1000日前の22年7月18日に発表された。「ミャクミャク」には2人から応募があり、それぞれ「『脈々』と受け継がれてきた私たち人間のDNA、知恵と技術、歴史や文化」「赤色と青色が動脈と静脈を連想」などのコンセプトを込めたという。
その後、ミャクミャクのグッズが続々と発表され、協賛企業も独自でスーツに付けるバッジなどを作製。当時、関西のある企業関係者は「会社からバッジを付けるよう言われているが、東京に出張すると取引先から奇異の目でみられる」とこぼしていた。サンリオの人気キャラ、ハローキティやシナモロールとコラボしたぬいぐるみなども売り出されたが、売り場では「誰が買うんだ」との声も聞かれるほどの不評ぶりだった。
開幕前、「税金の無駄遣い」と叩かれていた万博と同じく、批判にさらされ沈んでいくのではとの見方もあったミャクミャクだったが、徐々に「市民権」を得ていった。万博協会関係者は、万博の機運醸成イベントでミャクミャクの着ぐるみが登場する機会も多く、特に関西の子供からの人気の高まりが感じられたと振り返る。
評価が一変した理由について、有識者は次のように分析する。「やはり、見慣れたという点が大きい。メディアへの露出のほか、機運醸成に向けたシティドレッシングなどで目にする機会が大幅に増え、違和感が薄れてきたのではないか」としたのは、日本総合研究所関西経済研究センターの藤山光雄所長だ。さらに、グッズには販売数や販売場所が限られているものもあったことから、その希少性がグッズのみならずミャクミャク自体の人気を高めた、とも推測した。
ライセンス期間を延長
グッズの人気をめぐっては、万博会期中に許されない犯罪行為も多発した。鉄道写真を趣味とする「撮り鉄」の「大宮赤ラン軍団」と呼ばれる集団が、東京から新幹線を無賃乗車して万博会場入りし、転売目的で限定グッズを数十万円分も万引きした。
この事件で、大阪府警は窃盗容疑で東京都内の大学生の男6人を逮捕。この集団だけでなく、ミャクミャクが黒一色で統一された通称「黒ミャクミャク」のぬいぐるみなど、レアな商品を狙った窃盗事件が相次いだ。
