プロダクトからコミュニティーまであらゆるものをデザインするクリエイティブ集団「graf」を率いる服部滋樹さん(54歳)は、「大阪・関西万博2025」で未来社会の姿をデザイン視点で検討する委員会「Expo Outcome Design Committee」のメンバーを務めた。

1970年大阪府生まれ。美大で彫刻を学んだ後、インテリアショップ、デザイン会社勤務を経て、1998年にインテリアショップで出会った友人たちとgraf を立ち上げる。(写真・生津勝隆 )
「このチームでは、産業博として近未来の開発を見せるだけではなくて、未来に向けてたくさんのアイデアを見に行く場所にしたいと考えました。『私はこの未来を選択してみたい』と、自分たちの未来を作っていこうという。だからお客さんも、単なる観覧者ではなくて、未来を選択する一員として、参加してほしい。そこでできたのが『Co-Design Challengeプログラム』で、中小企業などに参加してもらって、社会課題の解決策を一緒に考えるというものです」
万博開催には懐疑的な人が少なくない。大阪、日本から発信できることは何なのか。
「今の資本主義社会の垂直方向、ヒエラルキーの関係性とは違う『生活』が、かつての日本にはありました。例えば『木造』『もったいない精神』『発酵文化』などです。これって自然と共に生きるという姿勢から生まれてきている態度であり、実は世界から今求められているものではないかと思います。垂直方向ではない、水平方向の社会を日本人はつくってきたという自負を持ち、世界に発信すべきじゃないかなって思っています」
服部さんは前回の万博が開催された1970年生まれで会場のあった吹田市で育った。
「70年万博の跡地には、国立民族学博物館ができました。子どもの頃、ここに通うことで、異世界のことを知ることができました。今回、万博会場に行くだけではなく、僕らも知らないような路地裏で『自分だけの発見』をどんどんしてもらえるような、大阪の日常を体験してほしいですね」