大阪・関西万博で、サウジアラビアの存在感が際立っている。サウジアラビアのパビリオンは日本館に次ぐ2番目の広さを誇り、豊かな歴史や活気あふれる現在、そして有望な未来を提供している。

なぜ、万博のパビリオンにここまで力を入れているのか? サウジアラビアは2016年発表の経済改革計画「ビジョン2030」に沿って、過度な石油依存の経済からの脱却を図っている。30年にリヤド万博、34年に男子サッカーW杯(ワールドカップ)を控えており、大阪・関西万博を通じた自国の魅力発信は重要な意味を持つ。
石油依存経済への逆風
サウジアラビアの石油埋蔵量は20年末時点でベネズエラに次ぐ、世界第2位の推定2975億バレル(世界シェア17%、可採年数〈R/P〉は73.6年)(出所:Energy Institute)。石油生産量や輸出量は常に世界トップ3に入る。サウジアラビアの石油政策は世界の石油供給と国際原油価格に大きな影響を及ぼしている。
石油収入はウクライナ戦争に伴う資源高の恩恵を受け、22年に8880億ドルを記録(出所:米エネルギー情報局)。政府にとって最大の財政収入源となっており、サウジアラビアの経済・財政状況は石油収入の動向に大きく左右される。
原油価格が下落すれば、財政収入が減少し、経済も後退する。原油価格の推移を管理することがサウジアラビアの優先課題となっている。
サウジアラビアは油価維持に向け、16年発足の「石油輸出国機構(OPEC)プラス」の減産枠組みを通じて、主要産油国と協力し、最大産油国の米国に対抗してきた。
ただ、サウジアラビアの石油依存経済は逆風に直面している。その背景には、米国のトランプ大統領が米国内の産油量をさらに増加させる方針を示したことや、OPECに対しても増産による原油価格の引き下げを要請したことがある。トランプ大統領には、インフレ対策としてのエネルギー価格の抑制に、とりわけサウジアラビアの協力が必要であるとの考えが見られる。
こうした中、サウジアラビアがかじ取り役を担うOPECプラスの8カ国は25年4月に自主減産措置を再延長せずに、段階的な縮小に動き始めた。これにより、8カ国合計で5月と6月それぞれで日量41万1000バレルの増産が見込まれる。