またUAEのアブダビでは、観光客の増加につながる欧米の文化施設も開設されている。フランスのルーブル美術館にとって国外初の分館「ルーブル・アブダビ」がサディヤット島で16年にオープンした。同島には、ソロモン・R・グッゲンハイム財団が運営するグッゲンハイム美術館も建設中である。
筆者は23年9月から24年9月までアブダビに駐在した際、世界各国の観光客がルーブル・アブダビを訪問していたのを目撃し、同館がUAEを代表する観光地の1つになっていると感じた。UAEはこうした芸術を基軸とした文化戦略でも、国際的なプレゼンスを高めようとしている。
カタールはスポーツイベントの開催を積極的に受け入れている。22年に男子サッカーW杯が行われ、来場者が186万人を記録し、同大会決勝戦の視聴者は過去最高の15億人にのぼった。カタールは19年に世界陸上、24年に世界水泳も実施したほか、今後も27年バスケットボールW杯や30年アジア競技大会の開催を予定している。
日本にとっても好機
25年は、サウジアラビアと日本が外交関係樹立70周年となる節目の年である。サウジアラビアは日本にとって重要な原油調達先であり、長年の石油取引を通じて良好な関係が維持されてきた。こうした友好関係に基づき、日本はサウジアラビアの文化・エンターテインメント産業の発展に協力することで、拡大を続けるサウジアラビア市場から経済的利益を得ることが可能である。
サウジアラビア側の日本への関心は高い。24年11月、サウジアラビア娯楽庁(GEA)主催の一大娯楽イベント「リヤド・シーズン(Riyadh Season)」は、プロボクシングの世界的チャンピオンで知られる、井上尚弥選手とのスポンサーシップ契約を締結した。これをきっかけに、井上選手が今後サウジアラビアで試合を行い、日本を含め世界からの来場が予想される。
日本のアニメに対する人気も高いことから、東映アニメーションは24年4月、サウジアラビアでの「ドラゴンボール」のテーマパーク建設構想を発表した。ドラゴンボールのテーマパークは世界初で、アニメで登場する場所や世界観などが再現される。同地には、サウジアラビア国内だけでなく、世界各国からドラゴンボール好きの来場者が予想され、サウジアラビアの一大観光地となるだろう。
また、サウジアラビアのゲーム業界への日本企業の進出も期待される。25年4月、東京に本社を置くGLOEは、サウジアラビアのゲーム企業「Hawk Gaming Group」と、業務提携に関する覚書を締結した。「ビジョン2030」の一環で、サウジアラビアのゲームおよびeスポーツ市場は近年急成長しており、23年のゲーム収入が約72億ドルに達し、人口の67%(2350万人)がゲームを行っているとされる。
サウジアラビアは「ビジョン2030」を通じて、過度な石油依存経済から脱却を図る上で、日本にも協力を求めている。日本もサウジアラビアとの関係をさらに強化していくためには、サウジアラビア側の声に応え、協力の手を素早く差し伸べることが重要である。
そして、大阪・関西万博でサウジアラビアのパビリオンを訪問することは、改革中のサウジアラビアという国をより理解するための絶好の機会となるだろう。