2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年6月24日

 米政府が検討すべき選択肢の第一は、米国は韓国の安全の保証者として、ロシア・韓国のパイプラインに公に強く反対すべきである。米政府は、韓国政府に対し、すでに困難な朝鮮半島の安全保障問題にロシアを介入させることになるとの懸念をはっきりと伝えるべきである。

 第二に、米政府は、石炭とLNGの輸出港の許可手続きを促進し、40年にわたる時代遅れの原油輸出禁止をやめることで、米国が主要なエネルギー輸出国となり、世界のエネルギー貿易体制で重要な役割を果たすことを、アジアの同盟国に納得させるべきである。

 第三に、米国は新しいガスに関しアジアとの協力を進めるべきである。中国はシェールガスの最大の埋蔵量を誇っている。日本はメタンハイドレートの開発において世界のリーダーである。世界のメタンハイドレートのエネルギー量は世界の石油、石炭、ガス全体のエネルギー量より大きいと推定されている。メタンハイドレートを安全に、かつ環境に配慮しつつ抽出することに成功すれば、世界のエネルギー事情は一変するかもしれない。

 第四に、米国はアジア太平洋地域のLNGの価格を下げ、ロシアのパイプライン・ガスとより競争できるような措置を支持すべきである。アジア太平洋地域の天然ガスの値段は石油とリンクされているが、消費者がより競争的なガス市場の利益を得るためには、地域の需給をより反映するスポット価格にリンクさせるべきである。アジア太平洋地域には、ガスの透明な取引を推進し、より競争的な価格を形成するような天然ガス取引所がない。現在の天然ガス市場はLNGに頼っており、ガスの価格はスポット価格で決められやすい。ロシアのパイプライン戦略が成功すれば、パイプライン・ガスの価格は石油にリンクされるので、アジアにおける天然ガス取引所構想は損ねられる。米国は日中韓の政府と協力して、ガス市場が次第にガスの価格が需給を反映するような市場になり、少なくとも地域にガス取引所が一つできるよう努めるべきである。

 最後に、米政府は、中国とインドを国際エネルギー機関(IEA)に加盟させるよう働きかけるべきである。加盟国になれば中国とインドはロシアより民主主義先進工業国との関係を強めることになるだろう、と論じています。

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 ロシアのパイプライン建設が、ロシアのアジア政策の柱になりうるので、米国もこれに対抗してアジアにおけるエネルギー安全保障戦略を推進すべきである、との論説の主張は適切です。


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