2025年12月15日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2025年11月18日

 高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁に中国政府が反発、11月14日夜、当面の間、日本への渡航を自粛するよう厳重注意を行った。これに伴い、16日、旅行業を管轄する中国文化旅行省も日本への旅行を自粛するよう呼びかけた。政府の注意喚起が金曜の夜だったこともあり、16日、17日の週末に日本旅行をキャンセルした人は少なかった模様だが、この状態が続けば、日本の観光業にとって大きな打撃となることは必至だ。

日中首脳会談から一転、高市首相(左)の国会答弁で関係に暗雲が出ている(首相官邸HPより)

 また、中国政府は「日本の治安情勢は不安定だ」などとして、日本への留学を慎重にするよう、呼びかけた。外務省の金井正彰アジア大洋州局長が日本側の立場を説明するため、17日に北京に向かったが、今後、貿易など経済面への報復にエスカレートしていく可能性もある。

「ここまでの措置に出るとは」中国国民も驚き

 問題となったのは7日の参議院予算委員会の場。高市首相は台湾有事を巡り、集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」になり得ると述べた。これに対して8日、中国駐大阪総領事の薛剣氏がXに「その汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」と投稿。ここから事態が一気に悪化していった。

 中国政府は日本への渡航を自粛するよう注意喚起した理由として「日本の指導者が公然と台湾問題に関する露骨な挑発的発言を行い、人的交流の雰囲気を著しく悪化させた。在日中国人の身体と生命の安全に重大なリスクをもたらしている」と説明した。中国の航空大手3社は15日、日本行きの航空券(今月15日から12月31日まで)のキャンセルに無料で対応すると発表した。

 急速に事態が悪化したことについて、今月上旬に関西地方を旅行したばかりの中国人男性は「ここまでの措置に出るとは驚いた。自分は外資系企業に勤務しているので、特に問題なく、今後も日本旅行に行けると思うが、地元企業や公務員、公立学校の教師などはほぼ渡航禁止、と言われたようなものだろう。場合によっては、コロナのときのように、上司にパスポートを取り上げられてしまうかもしれない。もし勝手に旅行に行けば組織内で大きな問題になるので……」と話す。また、この中国人男性は「今はほとんどが個人旅行。団体旅行で行く人は少ないので、打撃はそこまで大きくないのではないか」ともいう。


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