在日中国人ビジネスへの影響
実際、日本の観光庁のデータによれば、2024年の中国人観光客のうち、団体旅行客は約12%程度にとどまっており、今はほとんどが個人旅行客だ。中国の大手の旅行会社では、すでに11月中の日本行きのツアーは中止したが、その影響は限定的だ。だが、旅行に続いて日本への留学についても慎重にするようにとの呼びかけを行った。
中国教育省は「最近、日本の治安情勢は不安定で、中国国民を対象とした犯罪事件が多発しており、治安情勢と留学環境は良好とは言えず、日本に住む中国国民の安全リスクが高まっている」と述べ、「日本に滞在する留学生や、近日中に留学を予定している者に対して、現地の治安情勢に細心の注意を払い、リスク評価を強化し、防犯意識を高めるように」とも呼びかけた。
現在、在日中国人は約90万人いるが、そのうち、留学生は約14万人に上る。彼らは日本語学校や大学、専門学校などに通っているが、中国人向けの大学進学予備校が東京都内には多数あり、数千人以上の学生が通っている。
その経営者は中国人で、予備校の講師もほとんどが中国人だ。また、彼らが住む不動産などのマーケットも大きくなっており、中国人経済圏を築いている。
もし、今後、留学予定者が留学を延期したり、キャンセルしたりすれば、その影響は日本経済に対してはもちろん、在日中国人のビジネスにも及ぶことになる。ある予備校関係者の中国人は「まだ何とも言えない。事態がこれ以上悪化しないことをただ祈るだけ。留学生の中には今回の件で動揺している人もいる」と不安を口にする。中国に住む保護者から心配する電話もかかっているようだ。
中国国内のある学校で教師をしている筆者の知人は「留学するまでの間には、受け入れ先の確保や勉強などさまざまな準備があります。現在のところはまだわかりませんが、もし、呼びかけにとどまらず、留学自体をストップさせるような強い指示があった場合、留学予定者の精神的なショックは大きいと思います」という。また、この教師によると、すでに文化面での影響は出始めているという。
「学校側から日本人教師に対して、来週の会合に参加しないで欲しいといった通達がありました。他の学校でも同様のことが起きているようです。授業をすることは問題ありませんが、中国人と日本人が一緒に行う友好的なイベントや、外部で多数の人が参加する会合などは、しばらく実施できないようです」という。
