2025年12月13日(土)

令和の京都地図

2025年11月23日

石材:芳村石材店(創業:1726〈享保11〉年)8代目予定の山田麗さん(31歳)

 「実は北野天満宮さんの狛犬は弊社3代目の作品です。弊社は主に社寺等に使われる石製品の製作や施工を行っていますが、同時に全国の石造作家の方とのつながりを生かして石彫刻の製作と販売もしています。優れた伝統工芸士の技術も、石製品への関心やニーズが少なくなると継承できません。

 私たちができることとして、日本の石造美術や石文化の魅力を、国内外の方々に少しでも伝えていければと思っています。一緒に家業を手伝ってくれているアーティストの姉と共に、石屋仲間とも調和しつつ、新しいことに挑戦していきたいです」

石彫刻の作品を持って微笑む山田麗さん(左)と姉の愛さん(右)。出店した石の神経衰弱は遊びながら石の種類を学べて大人でも楽しめた

仏具:若林佛具製作所(創業:1830〈天保元〉年)後を継ぐか決めかねている若林紗和子さん(32歳)

 「パートナーも後継ぎなので、私も家業を継ぐのは難しいのではないかと迷っています。老舗の多い京都には、継がなかった人、継げなかった人、迷っている人がたくさんいます。後継ぎのコミュニティーの中で唯一、ここはいろんな立場の人を『アトツギ』と呼んで受け入れてくれます。大勢の同世代のアトツギさんとつながれるのは力になります。その中で、私も方向性を考えていきたいと思います」

加藤健旗店が作成した旗の前で笑顔を見せる若林さん。2023年に家業に入社し総務人事を担当。それまでは人材会社の営業職として東京やシンガポールでも勤務した

 ─「後を継ぐ」ということは、ただ単に用意された「神輿」に乗るようなことではない。生まれた家の歴史、両親や祖父母といった大事な人々の思いを引き継ぐという尊いことなのだ。だからこそ、似た境遇の仲間が集まる「アトツギ縁日」の場は、彼らが思いを共有したり、寛いだりする場になっているのだろう。そう思えてならなかった。

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Wedge 2025年12月号より
令和の京都地図 古くて新しい都のデザイン
令和の京都地図 古くて新しい都のデザイン

時代が変わるたび、京都は常に進化を遂げてきた。「千年の都」京都は今後、どう変わってゆくのか。日本人のみならず、世界中の人々を惹きつけてやまない魅力や吸引力はどこにあるのか。京都に根を張る各界の先駆者たちに聞く令和時代の新しい京都地図とは─。


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