石材:芳村石材店(創業:1726〈享保11〉年)8代目予定の山田麗さん(31歳)
「実は北野天満宮さんの狛犬は弊社3代目の作品です。弊社は主に社寺等に使われる石製品の製作や施工を行っていますが、同時に全国の石造作家の方とのつながりを生かして石彫刻の製作と販売もしています。優れた伝統工芸士の技術も、石製品への関心やニーズが少なくなると継承できません。
私たちができることとして、日本の石造美術や石文化の魅力を、国内外の方々に少しでも伝えていければと思っています。一緒に家業を手伝ってくれているアーティストの姉と共に、石屋仲間とも調和しつつ、新しいことに挑戦していきたいです」
仏具:若林佛具製作所(創業:1830〈天保元〉年)後を継ぐか決めかねている若林紗和子さん(32歳)
「パートナーも後継ぎなので、私も家業を継ぐのは難しいのではないかと迷っています。老舗の多い京都には、継がなかった人、継げなかった人、迷っている人がたくさんいます。後継ぎのコミュニティーの中で唯一、ここはいろんな立場の人を『アトツギ』と呼んで受け入れてくれます。大勢の同世代のアトツギさんとつながれるのは力になります。その中で、私も方向性を考えていきたいと思います」
─「後を継ぐ」ということは、ただ単に用意された「神輿」に乗るようなことではない。生まれた家の歴史、両親や祖父母といった大事な人々の思いを引き継ぐという尊いことなのだ。だからこそ、似た境遇の仲間が集まる「アトツギ縁日」の場は、彼らが思いを共有したり、寛いだりする場になっているのだろう。そう思えてならなかった。
