インドネシア・西スマトラ州で洪水の被害状況を見る住民ら(11月30日、パダン)
インドネシア政府は1日、同国を先週襲ったサイクロン(熱帯低気圧)「セニャール」の豪雨による大洪水で、スマトラ島を中心に国内での死者が502人に上ったと発表した。また、508人が行方不明となっており、約2500人が負傷したとした。多くが土砂崩れに巻き込まれたとみられている。
この地域で極めて珍しいサイクロンは、インドネシアで壊滅的な土砂崩れと洪水を引き起こした。多くの家が流され、数千棟の建物が水没した。
インドネシアの国家防災庁によると、行方不明者はアチェ、北スマトラ、西スマトラの各州で出ている。
AFP通信によると、西スマトラ州の州都パダンから約100キロの位置にあるスンガイ・ニャロ村では、30日には洪水がほとんど引いたが、家屋や車両、農作物は分厚い灰色の泥で覆われていた。
住民らによると、当局はまだ道路の泥や障害物などの撤去に着手していない。外部からの支援も届いていないという。
イドリスさん(55)は、「ほとんどの村人は残ることを選んだ。家を放りっぱなしにしたくなかった」とAFP通信に話した。
AP通信によると、スマトラ島では商店への押し入りが複数発生しているとの報告があり、警官たちが秩序回復のために派遣された。
警察の報道官は、「略奪は支援物資が届く前に起きた」、「(住民らは)支援が届くとは知らず、飢えるのではないかと心配していた」と話した。
被災地には空路と海路で支援物資が運び込まれている。だが、何も届いていない村もある。
近隣国なども支援に乗り出している。マレーシアは、特に被害が大きかった地域の一つ、アチェ州に医薬品を送っている。
ハイテク界の富豪イーロン・マスクさんは、緊急時の通信をサポートする目的で、通信衛星システム「スターリンク」のサービスを無償提供すると述べた。
東南アジア各地で大きな被害
東南アジアなどを先週襲った集中豪雨と暴風雨は、タイ、マレーシア、フィリピン、スリランカにも壊滅的な被害をもたらした。
タイでは洪水で少なくとも170人が死亡。マレーシアでも数人の死亡が報告されている。
フィリピンでは、相次ぐ大洪水で200人以上が死亡した。同国政府は治水のための資金が汚職で失われたと認めており、30日にはこれに抗議する月内2回目のデモが首都マニラであり、数万人が参加した。
フェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領は、洪水対策の資金を着服したとして、数人の政治家や役人らを解任している。
しかし、現在身を隠している政治家の1人は、汚職を指揮していたのは大統領自身だと主張。大統領は、プロパガンダだとしてこれを否定している。
(英語記事 Indonesia searches for hundreds missing in deadly floods)
