2025年12月16日(火)

WEDGE REPORT

2025年12月5日

イスラエルが供与した武器をハマスが没収? その行方は 
国際社会が求める「武装解除」の陰で武器収集に奔走するハマスの実態

 さらに気になるのは、テレグラム上の投稿でのこの一文だ。

「この作戦の結果、民兵組織の複数の構成員が逮捕され、彼らの破壊活動に使用されていた軍事的な装備や器材が押収された」

 ラダアはそれまでにも度々、民兵組織から「武器を没収」したと書き込んでいるのが確認できる。一方で、アブ・シャバブ氏率いる人民軍に関しては、イスラエル側からカラシニコフ銃を含む武器が供与されてきたことが報じられている。

 ネタニヤフ首相自身も、「ハマスに対抗させる」目的で武装化させたことを認めており、アブ・シャバブ氏自身は否定しているものの、武器がイスラエル側から渡っていた可能性は極めて高い。ここで沸く疑問は、ハマスがイスラエルから供与されたとされる武器などを没収した後、どのように扱うのかという点だ。

 ハマス幹部のハリル・アル・ハイヤ氏は、武装解除について問われたとき、こう語っている(10月26日アルジャジーラ)。

「パレスチナ人は占領に立ち向かう権利を持っている」
「パレスチナ人のための国家が樹立されれば、武器とハマスの構成員はその国家のものとなる」

 一方で、別の幹部からは「武器引き渡しは議論の余地なく、交渉の対象ではない」と、事実上武器の引き渡しを拒否する声も出ており、対立する民兵組織などからハマスが着々と没収している武器の行方については極めて不透明な状態だ。

 加えて、ハマスはイスラエルが置き去りにした爆薬の回収にも積極的で、再爆発などの危険から市民を守る体を示しつつ、その爆薬を再利用する可能性もある。結果的に、イスラエル側が様々な形でハマスの武装強化に繋がりかねない武器や弾薬をガザの現場に残し、内部での混乱を誘引、激化させかねない状態となっている。

 そもそもイスラエルにとって、ガザ内部で混乱が起きている方が都合が良いとの指摘は戦争以前からあるものだ。ハマスを完全消滅させるよりむしろ、体制の一部を残しておくことで内部の分裂状態を維持してきたというわけだ。

 ここへきて、トランプ氏主導で実質的にハマス壊滅を目指すシナリオと、パレスチナ国家の樹立が現実味を増してくる事態を、極右の強硬な意見にも耳を傾けざるを得ない現イスラエル政権がどのように捉えるか。

 少なくとも、ハマスによる粛清などの残虐な行為が「内部分裂」として国際社会に曝け出されることは、イスラエル側に好都合であることは間違いない。ハマスを攻撃する格好の口実を得ることになるからだ。

 一方で、ハマス側もそれを充分に理解してか、その粛清映像がインターネット上で拡散された直後、内部での「方針転換」を即座に図ったものと思われる(『連載第2回参照』)。停戦交渉の水面下ではまさにこうした、双方の思惑が複雑に絡み合いながら細い糸でかろうじて繋げられている状態だ。


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