4月最後の週末、「米国トヨタがカリフォルニアからテキサスに移転」とのニュースが全米を駆け巡った。カリフォルニア州ロサンゼルス郊外トーランスの米国トヨタ本社を、2017年まで段階的に、テキサス州ダラス北郊のプレイノに新しく建設される本社キャンパスに移すことが発表されたのだ。
トーランスのトヨタ本社には4000人の従業員が働いている。人口14万5000人の同市にとって、トヨタは最多従業員を抱える雇用主でもある。税収は言うに及ばず、地域社会に莫大な寄付金を提供するコミュニティーリーダーとしても、同じくトーランスに本社機能を置くホンダと共に看板企業の役目を担ってきた。
しかし、カリフォルニアはここ最近、高税率かつ不公平で複雑な税金を課す州との悪評が高く、企業には人気がない。移転先のテキサスは、フォーブスが全米でビジネス好適州7位に位置づけている。トヨタは表向きの移転理由を、ケンタッキーの技術部門とカリフォルニアの販売部門の機能を一カ所に集めて「One Toyota(1つのトヨタ)」を実現することだとしている。しかし、トヨタが事前にリストアップした移転候補地10都市にカリフォルニアは一カ所も含まれていなかった。また、トーランスはロサンゼルスの大都市圏に属すことで優秀な人材には恵まれているが、テキサスのプレイノに比較すると、生活費は4割も高くつく。言い換えれば、テキサスでは同じ給料でも質の高い暮らしを送ることが可能となる。
今回のニュースを聞いて、フラッシュバックのように蘇ったのが、8年前の日産本社のロサンゼルス郊外からテネシー州ナッシュビルへの移転だ。日産は当時、本社勤務のうち4割の従業員が移転に伴い転勤したと発表した。しかし、8人の役員が移転後2年以内に退職している。彼らは、家族を残し単身赴任した後、ロサンゼルスに転職先が見つかると、会社よりも「住み慣れたカリフォルニア」を選択したのだ。