2025年12月18日(木)

BBC News

2025年12月18日

ジャレド・アイザックマン氏

アメリカの議会上院は17日、航空宇宙局(NASA)のトップに富豪の投資家ジャレド・アイザックマン氏(42)を充てる人事案を承認した。NASA長官の選出は、ドナルド・トランプ大統領が同氏を指名し、いったん取り下げた後に再指名するという、異例の経緯をたどった末に決着した。

アイザックマン氏はジェット機のアマチュアパイロットで、宇宙飛行士を職業としていない人として初めて宇宙遊泳をした。NASA長官が民間から直接登用されるのは数十年ぶりのこととなる。

中国に先駆けて人類を月に再び立たせることができるかが、長官としての評価を決める最大のポイントになるとみられている。

トランプ氏は、アメリカが月に恒久的な基地を建設し、資源を採掘したり、火星到達への足がかりとして利用したりすることを望むと表明している。

上院はこの日、賛成67、反対30の大差でアイザックマン氏の指名案を承認した。

トランプ氏は昨年12月、アイザックマン氏を指名する意向を初めて明らかにした。しかし、同氏の盟友イーロン・マスク氏とトランプ氏の確執が公となるなか、今年5月に指名を取り下げた。

トランプ氏にとって最大の政治献金者の一人で、宇宙企業スペースXの最高経営責任者を務めるマスク氏は、ホワイトハウスの大統領執務室にもよく姿を現していたが、政府の支出をめぐって両氏は鋭く対立するようになった。

トランプ氏がアイザックマン氏の指名を撤回したのは、それから間もなくのことだった。「過去の関係を徹底的に検証する」とトランプ氏は説明した。

ところが11月になり、トランプ氏は再びアイザックマン氏を指名した。同氏は今月初めの上院承認公聴会で、トランプ氏が打ち出している月面探査について、その使命をしっかり受け止めると述べた。月面の開発をめぐっては、宇宙開発競争が高まるなかで各国がしのぎを削っている。

民間の競争力の活用を強調

アイザックマン氏は公聴会で、「私たちは遅れを取ることはできず、行動しなくてはならない。なぜなら、もし遅れれば、もし間違いを犯せば、私たちは決して追いつけないかもしれないからだ。そして、その結果、地球上のパワーバランスが変わってしまうかもしれないからだ」と述べた。

アイザックマン氏は、宇宙開発競争で勝つには、民間企業の競争力をもっと取り入れることが重要だとの立場だ。

民間の競争にオープンな同氏の姿勢は、マスク氏との対立を生む可能性がある。アイザックマン氏は先週、スペースXのライバル企業でアマゾンのジェフ・ベゾス氏が所有するブルー・オリジンによる大型契約の受注を称賛した。

アイザックマン氏はまた、NASAを「科学の戦力増強者」と位置づけ、大学や学術機関ともっと提携すべきだと訴えている。

さらに、「プログラムを進めるためならすべての選択肢を探る。科学的な成果を出すために必要とあらば、私自身が資金を提供することもある」と述べている。

米誌フォーブスによると、アイザックマン氏の純資産は12億ドル(約1870億円)と推定されている。大半は決済処理会社からの収入と、パイロットの養成や元軍用機の運用をする会社の売却によって得たものだという。

同氏にとってNASA長官は初の政治職となる。

NASAでは7月から、ショーン・ダフィー運輸長官が暫定的に長官をつとめており、アイザックマン氏はその後任となる。

(英語記事 Billionaire Jared Isaacman, an Elon Musk ally, confirmed as Nasa chief

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/clydjjeglr1o


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