2025年12月18日(木)

BBC News

2025年12月18日

パレスチナ・ガザで数日間続いた豪雨で、避難民の所持品や避難所が損傷するなど、約5万5000世帯が影響を受けている。画像はガザ中部ヌセイラト難民キャンプ(17日)

パレスチナ・ガザ地区で先週から豪雨が続き、すでに悲惨な避難生活を送っていたパレスチナ人数十万人の生活環境が悪化したと、国連児童基金(ユニセフ)が17日に明らかにした。

ユニセフの広報担当ジョナサン・クリックス氏はBBCに対し、16日夜の天候は「恐ろしいもの」だったと語った。あまりに激しい雨の影響で、同氏の事務所付近では地上から高さ15センチメートルまで水が達したという。

クリックス氏は、テントや仮設シェルターの子どもたちが濡れた衣服のまま生活し、低体温症やほかの病気にかかることを非常に懸念していると述べた。

イスラム組織ハマスが運営するガザ保健省は、この悪天候で乳児1人が低体温症で死亡し、建物の倒壊で少なくとも11人が死亡したとしている。

9週間前にガザで停戦が始まって以来、国連機関はテントや毛布、衣類の供給に力を入れてきたが、依然としてガザには十分な援助が届いていないという。

国連とそのパートナー機関は、これまでに約5万5000世帯が豪雨の影響を受け、所持品やシェルターが損傷または破壊されたと推定している。

15日と16日の大雨では、40以上の指定緊急避難所が深刻な浸水被害を受け、多くの人が再度の避難を余儀なくされた。

湿った服が乾かず

ユニセフのパレスチナ事務所広報チーフのクリックス氏は17日、BBCのラジオ番組「トゥデイ」で、「昨夜(16日夜)は(避難している)家族にとって本当に恐ろしいものだった。あまりに雨が激しく、一時は(地面から)10センチ、15センチの高さまで水が達しているのが、私たちの事務所やゲストハウスから見えた。風も非常に強かった」と語った。

「今朝、車で移動している時に、多くの人がバケツで水をくみ出そうとしているのを目にした」

テントや仮設シェルターで暮らす推定100万人は、イスラエルとハマスの2年以上にわたる戦争で何度も家を追われており、着替えはまったくないか、わずかしか持っていないと、クリックス氏は指摘した。

「今朝、子どもたちを見てみたら、服が湿っていた。親たちは毛布を乾かそうとしていた。だが、この4~5日の間ほぼずっと雨が降っているので、子どもたちの体を乾いた状態で保つのは極めて難しい」と、クリックス氏は述べた。

「夜間は気温が摂氏7~8度になるので、子どもたちが病気になったり、もっとひどくなれば低体温症で命を奪われるかもしれない。そういう事態を我々は非常に懸念している」

そして、避難民が身を寄せる多くのテントは、雨に伴う強風で吹き飛ばされたり破壊されたりする危険にさらされていたと、クリックス氏は付け加えた。こうしたテントは、もろい木材に防水シートやビニールシートをくぎで打ちつけただけの構造だという。

子どもたちが厳しい冬に対処できるよう、ユニセフはこの停戦中に25万人分の冬服一式と毛布60万枚、テント7000張などの追加援助物資を搬入したが、それでも十分ではないと、クリックス氏は述べた。

クリックス氏は、「我々は、援助物資を運搬・配布するために絶え間なく取り組んでいる。それでも、需要の規模があまりに大きく、今も毎晩、何千人もの市民や子どもが苦しんでいる状況だ」と警告した。

ガザ保健省は、モハメド・アブ・アルハイルという名前の生後2週間の男児が、15日に低体温症で死亡したと発表した。男児は2日前から病院の集中治療室に入院していたという。同省は、戦争で損傷した建物が倒壊し、その中に身を寄せていた11人が死亡したとも付け加えた。

その後、ハマス運営のガザ民間防衛隊のマフムード・バサル広報担当は、死者数を上方修正した。バサル氏は動画で、建物の倒壊や寒さの影響でこれまでに子ども4人を含む計17人が死亡したと発表した。

また、暴風雨により建物17棟が完全に倒壊し、90棟が部分的に倒壊したと付け加えた。

ある動画には、ガザ市北西部にあるシャティ難民キャンプで16日、民間防衛隊が倒壊した建物のがれきの中から男性1人の遺体を収容する様子が映っている。複数の目撃者によると、建物の屋根が突然崩落したという。

この男性の親族のアフメド・アルホサリ氏はAFP通信に、「私たちが抱える問題を解決し、みんなが家を追われて路上で暮らすのではなく、家を持てるように(ガザを)再建するよう、世界に訴える」と語った。

赤十字国際委員会(ICRC)は、すでに損傷していた建物が悪天候で倒壊したことを「深く憂慮している」としている。

ICRCは、「食料、住居、重要インフラの修復資材など、緊急かつ長期的なニーズに対応するため人道支援の強化と持続的な提供」が必要だと強調した。

援助物資の搬入規模

ガザ境界の検問所を管理するイスラエル占領地政府活動調整官組織(COGAT)は、意図的に援助が制限されているとの主張を、「現地の実情や日々行われている調整作業と矛盾する」として一蹴している。

COGATは、1日あたり600~800台のトラックが人道物資をガザに搬入しており、停戦開始以来、31万張近いテントや防水シート、トラック1800台超分の毛布と衣類が届けられているとしている。

国連によると、同期間にテント計6万7800張、防水シート37万2500枚、寝具31万8100点が、搬送のため検問所から回収されたという。

イスラエルとハマスの停戦の第2段階には、ガザ再建計画や戦後のガザ統治、イスラエル軍のガザ撤退、ハマスの武装解除が含まれている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は先週、第2段階への移行に近づいているが、その前にハマスがガザに残るイスラエル人人質1人の遺体を返還する必要があるとした。第1段階では、ハマスがイスラエル人の人質を生死を問わず全員帰還させることが条件に含まれている。

イスラエル軍は、2023年10月7日にハマスが主導したイスラエル南部への攻撃への対応として、ガザへの攻撃を開始した。ハマス主導の攻撃では約1200人が殺害され、251人が人質に取られた。

それ以来、イスラエルによる攻撃でガザでは7万600人以上が殺害されていると、ハマス運営のガザ保健省は発表している。

(英語記事 Heavy rains worsen conditions for displaced Gazans, UN warns

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cyvg12l6z99o


新着記事

»もっと見る