大卒の就職難という
トランプへの〝追い風〟
ところが、このように政権による大学への圧力が強まる中で、25年夏には意外な動きが起きた。5月に一斉に卒業した4年制大学卒業者の就職率が前年比で顕著な悪化を見たのである。とりわけ就職に有利とされて人気であったコンピューター・サイエンス専攻や、ファイナンス専攻の卒業生が苦しんでいる。米連邦準備制度理事会(FRB)の調査によれば、大卒者と高卒者の失業率の差が縮小しており、1970年代以降で最低の2.4ポイントになっているのだという。
実は、この大卒就職難については、定説が固まっていない。同時に進行している失業率の上昇が景気の後退を示しているのかどうかについても、連銀、政府、市場のコンセンサスができていない。
米国社会に広まっているのはAIの急速な普及が「初級知的労働」を人間から奪っているという解釈だ。
例えば、コンピューター・サイエンス専攻の場合、初級プログラマーの職務内容はほとんど全てAIがやってくれるので、人間の役割は設計や進捗管理などに限られてくる。
同じことが、調査や文書作成などの自動化が進むことで金融機関や法律事務所などでも起きているのだという。
大卒者が求職に苦しむ中で、ブルーカラーまたはエッセンシャル・ワークと呼ばれる現場労働については、雇用は底堅い。例えば、米国内でも半導体や電池など、先端技術に関係した製造工場、あるいはデータセンターなど大規模施設の建設は激増している。こうした施設の場合は、基礎や建屋だけでなく配管や電気工事、あるいは空調などにも高度な施工技術が求められる。そこで、ノウハウのある親方が事務所を会社組織にして事業を拡大するといった事例も出てきた。中には事業の規模をビリオン(10億ドル)単位に拡大するといった場合もあり、「ブルーカラー・ビリオネア」と呼ばれるようになっている。
トランプ政権は、その第2期の発足当初に名門大学への資金提供を絞る代わりに、資金を配管工の養成に回すとしていた。当時はアンチ・エリートのイデオロギーから来る一種の暴言とみなす論調が多かったが、「ブルーカラー・ビリオネア」が登場する中では、図らずもこのストーリーは的を射ていたことになる。
さらにいえば、関税政策を続けることで、仮にアジアなどに流出していた半導体やスマホなどの製造工場を米国内に回帰させたとして、そこではテスラの電池や車両の工場のようにロボット中心の自動化工場になるであろうといわれている。その場合、人の労働力への依存は大きく減るが、それでも残る人の役割はロボット化された製造マシンの高度なトラブル・シューティングになると考えられている。仮にAIが初級の知的労働を奪ったとして、大卒の若手人材はそうした自動化工場における問題解決型の労働に就くことになるという見方もある。

