対立続けば
支援にブレーキも
イスラエルが絡み、対立構図はより広域に、そして複雑になった。
イスラエル軍は南部の占領地ゴラン高原でシリアとの緩衝地帯への進軍を続け、ドルーズ派保護を名目に南部一帯の非武装化も要求する。もともと暫定政権に懐疑的だったシリアのドルーズ派の世論は、イスラエルを後ろ盾にした「分離独立」へと一気に傾いた。
モウサナは「私たちは国際的な保護を求めてきましたが、応じてくれたのはイスラエルだけでした。介入がなければ皆殺しにされていたでしょう」と話す。コーヒー店主ハルドゥン・ビタール(46歳)も「シリアからの分離独立に何の問題もありません。パレスチナ占領には反対ですが、いまやイスラエルは殺戮から救ってくれた救世主だと感じています」と心境の変化を語った。こうした動きに対し、イスラエルの軍事介入に憤り、シリアの「結束」を求めるスンニ派はいらだちを募らせる。
そのほかの周辺地域も難題が山積みだ。
西部のタルトスやラタキアなどアラウィ派が多い沿岸部での3月の衝突では、国連シリア独立調査委員会の報告書によると約1400人が死亡した。その後もシリア全土で少数派の襲撃や処刑が相次ぎ、SOHRはこの1年で民間人8835人が犠牲になったとしている。
北東部一帯を支配するクルド人主体の武装勢力シリア民主軍(
12月には過激派組織「イスラム国」(IS)に米兵ら3人が殺害される事件が起き、東部に潜むISの脅威も改めて認識された。
少数派との関係が安定しなければ、国際社会の支援にブレーキがかかる可能性もある。米国のシーザー法廃止には、少数派の保護やアサド政権崩壊後の残虐行為の訴追など8項目について半年ごとに評価する仕組みがあり、違反が続けば新たな制裁を科す余地を残している。
多様な集団を暴力で少数派の下に束ねてきたアサド政権のくびきを解かれ、大量殺害を経て「モザイク」の間の溝がさらに深まった今、シリアは一つの国として成り立っていくのか岐路に差し掛かっている。多数派の希望をつなぎとめ、少数派に対する暴力を制止できるか。そこには日本をはじめとする国際社会の「関与」と「監視」が強く求められている。(文中敬称略)

