2026年2月6日(金)

WEDGE REPORT

2026年2月6日

対立続けば
支援にブレーキも

 イスラエルが絡み、対立構図はより広域に、そして複雑になった。

 イスラエル軍は南部の占領地ゴラン高原でシリアとの緩衝地帯への進軍を続け、ドルーズ派保護を名目に南部一帯の非武装化も要求する。もともと暫定政権に懐疑的だったシリアのドルーズ派の世論は、イスラエルを後ろ盾にした「分離独立」へと一気に傾いた。

 モウサナは「私たちは国際的な保護を求めてきましたが、応じてくれたのはイスラエルだけでした。介入がなければ皆殺しにされていたでしょう」と話す。コーヒー店主ハルドゥン・ビタール(46歳)も「シリアからの分離独立に何の問題もありません。パレスチナ占領には反対ですが、いまやイスラエルは殺戮から救ってくれた救世主だと感じています」と心境の変化を語った。こうした動きに対し、イスラエルの軍事介入に憤り、シリアの「結束」を求めるスンニ派はいらだちを募らせる。

 そのほかの周辺地域も難題が山積みだ。

 西部のタルトスやラタキアなどアラウィ派が多い沿岸部での3月の衝突では、国連シリア独立調査委員会の報告書によると約1400人が死亡した。その後もシリア全土で少数派の襲撃や処刑が相次ぎ、SOHRはこの1年で民間人8835人が犠牲になったとしている。

 北東部一帯を支配するクルド人主体の武装勢力シリア民主軍(SDF)と暫定政権は、今年に入ってアレッポなどで衝突したが、1月末にSDFを段階的に暫定政権に統合することで合意した。

 12月には過激派組織「イスラム国」(IS)に米兵ら3人が殺害される事件が起き、東部に潜むISの脅威も改めて認識された。

 少数派との関係が安定しなければ、国際社会の支援にブレーキがかかる可能性もある。米国のシーザー法廃止には、少数派の保護やアサド政権崩壊後の残虐行為の訴追など8項目について半年ごとに評価する仕組みがあり、違反が続けば新たな制裁を科す余地を残している。

 多様な集団を暴力で少数派の下に束ねてきたアサド政権のくびきを解かれ、大量殺害を経て「モザイク」の間の溝がさらに深まった今、シリアは一つの国として成り立っていくのか岐路に差し掛かっている。多数派の希望をつなぎとめ、少数派に対する暴力を制止できるか。そこには日本をはじめとする国際社会の「関与」と「監視」が強く求められている。(文中敬称略)

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Wedge 2026年2月号より
世界を揺さぶるトランプ・パワー
世界を揺さぶるトランプ・パワー

1月3日、トランプ大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、ベネズエラに対する攻撃を成功させ、マドゥロ大統領を拘束したと発信し、世界に衝撃を与えた。自らを「平和の使者」と称していたトランプ氏だが、戦火の口火を切った格好だ。トランプ氏にとっては、犯罪者を拘束するための法執行をしたにすぎないという認識なのだろうが、議会の承認を得ていないほか、国際法に違反しているという指摘もある。 独裁者を追放するという帰結と、そのプロセスは別に考えなければならない。そうでなければ、「力による現状変更を容認しない」という、戦後80年かけて世界が営々と築き上げてきた共通認識を崩したロシアを誰も批判できなくなる。 そもそも、トランプ氏は積み上げられてきた「ポリティカル・コレクトネス」を否定し、ルールを決めるのは自分だと言わんばかりの行動をとってきた。まさに「トランプ・パワー」である。 そんなトランプ氏を大統領に再度選んだ、現在の米国の政治経済、外交、そして思想などをつぶさに見ていくと、我々が知っているかつての米国から大きく変貌していることが分かる。 それでも米国が日本にとって重要な同盟国にあることに変わりはない。米国とどう向き合っていくのか。世界だけではなく、日本こそ問われている。


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