2026年2月5日(木)

Wedge REPORT

2026年2月5日

 実際、オーバーツーリズムが叫ばれる京都や大阪、広島などの人気観光地でのポイ捨てやトイレへの放置、自動販売機横への無理な押し込みなどの問題が深刻化している(京都市の観光地で「お供物入れ」にゴミの山 外国人観光客ら勘違い? 住民「非常に残念」|京都新聞デジタル)。「ゴミは持ち帰るのがマナーです」などの啓発活動も行われているが、それだけでは事態の改善は厳しいように思われる。文化の違いだけでなく、そこに居住していない者との意識の差は、どうしても生まれてしまうからだ。

なぜ街中からゴミ箱がなくなったのか

 「もっと街中にゴミ箱を増やしてほしい」。こういった意見は、筆者の所属する大学の学生からもよく聞かれる。しかし、ゴミ箱は置けば終わりではなく、維持管理には様々なコストがかかる。

 たとえば、回収運搬にかかる人件費、焼却・リサイクルにかかる処理費、汚れた周辺を清掃するメンテナンス費、分別されていないゴミを仕分ける手間に加え、家庭ゴミの持ち込みや事業ゴミ廃棄への対策なども必要である。身も蓋もない言い方であるが、管理側にとってゴミ箱は「利益を生まないコスト製造機」でしかなく、積極的に設置することの直接的なメリットを見出しにくい代物である。

(helivideo/gettyimages)

 駅や施設等のゴミ箱撤去のあおりを受けて、長らく実質的に「公共のゴミ箱」の役割を担わされてきたコンビニにおいても、近年は撤去の動きが加速している。その理由は様々あるだろうが、コストがかかる対象であることは間違いないだろう。

 前述のテロ対策や日本人の精神性の陰に隠れているが、実のところ街のゴミ箱撤去には、こうしたコスト面が大きく影響している。

ゴミ箱撤去が生み出す見えないコスト

 このように、個々の事業者にとって、ゴミ箱を置かないことのメリットは大きく、むしろゴミ箱を設置する理由はほとんどないとさえいえる。一方、社会全体で見ると、ゴミ箱を設置しないことで、別の形でコストになっている面もある。

 第一に、清掃費用の増大である。前述のように、ゴミのポイ捨てが増加すれば、その分路上清掃のコストが上昇する。

 環境省の「一般廃棄物処理実態調査」(令和4年度)によれば、全国の一般廃棄物処理費用は年間約2兆1000億円に達する。このうち散乱ゴミ対策に費やされる費用も相当額あることが推定され、ゴミ箱を適切に配置して計画的に回収する方が長期的には効率的である可能性がある。海外の事例ではあるものの、ゴミ箱を戦略的に配置することは、ポイ捨ての減少や清掃コストの低減効果をもたらす可能性がある(文脈におけるゴミ - P. ウェズリー・シュルツ、レネー・J・バトル、ローリ・ブラウン・ラージ、コーラル・M・ブルーニ、ジェニファー・J・タバニコ、2013年)。


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