無名の日本人
ガラパゴスを歩いた男 朝枝利男の太平洋探検記 丹羽典生 教育論評社 2640円(税込)
本書を開くと美しい魚の写生画が掲載されている。本書の主人公である朝枝利男が描いたものだ。朝枝は戦前、米国に渡り、探検家・写真家として、ガラパゴス諸島をはじめとした太平洋の島々を訪問する。驚かされたのは、大ヒット映画『ナイトミュージアム』にも登場する、ニューヨークの自然史博物館にあるモアイ像。このモアイ像の型をイースター島でとってきたのが朝枝なのだ。日米開戦後は、日系人収容所に入れられるという経験もする。それでも、戦後はカリフォルニア科学アカデミーの学芸員として活躍する。朝枝が撮った写真は国立民族学博物館のHPからも見ることができる。
アメリカを多角的に分析
地図で読むアメリカ ジェームス・M・バーダマン、森本豊富 朝日新書 1320円(税込)
日本人にとってアメリカという国は身近な存在かもしれないが、内実をどれほど知っているだろうか。本書は文化や宗教、気候、産業、政治など幅広い観点から解説する。読み進めると、地域ごとに全く異なる顔を持つことに驚く。英、仏、スペインなどの植民地統治時代を経て、移民国家として発展したアメリカだが、2050年までに総人口の29%がヒスパニック系になると予測されるという。時代と共に人種構成も大きく変化するアメリカは、一つの生態系のようだ。
NY新市長の実像
社会主義都市 ニューヨークの誕生 矢作 弘 学芸出版社 2420円(税込)
資本主義の〝首都〟とも呼べる米ニューヨーク市(NYC)で「民主社会主義者」の市長が誕生したことは多くの人々を驚かせた。本書では、そのゾーラン・マムダニ氏の実像を描くと共に、NYCが抱える課題も教えてくれる。例えば、マンハッタンでは、ワンルームの家賃が4200ドルもするし、それ以外の物価も上昇している。「アフォーダブル」という言葉が受け入れられるのも理解できる。単なる「急進左派」市長が突然誕生したわけではないことを本書は教えてくれる。
