だからこそ、「市町村」をさらに評価し、実態のある「地方分権」を行うことが求められている。
地方への移住や出戻りを経て活躍できる様々な事業者を増やし、育てていく支援をさらに充実させなければならない。そうして産業が興れば人が集まり、人が集まれば税収が 潤い、結果として市町村の維持にもつながるのである。
目下、取り組むべきなのは、市町村の仕事を充実するために、国や都道府県から市町村にくる交付金や補助金関係の事務の簡素化である。特にコロナ禍以降、少子化対策をはじめとした事務作業がひっ迫している。国や都道府県が実施するこの種の予算は国民に喜ばれる場合が多い。しかし、これらの施策には市町村が条件に合致する市民一人ひとりに配布するために膨大な事務を必要とすることが多いのも確かだ。
また戸籍事務をマイナンバーカードに統合するなど、思い切った事務の合理化を図り、市町村の事務負担を軽減することが欠かせない。特に、過疎化が進む中山間地や離島では、公務員と他産業の兼業を積極的に認めるべきだ。
この数十年、市町村は業務の増加を主として民間に委ねることで対応してきた。特に03年に導入された指定管理者制度の導入により、民間委託できる事業の範囲も相手方も飛躍的に拡大した。しかしそれも限界に達しており、根本策が求められている状態にある。
「従来」の議論から脱却し
歴史的転換点に向き合え
こうした地方自治のあり方を再考する時、バブル崩壊後行き詰まった1990年代以降、「道州制」の是非に関する議論が浮かんでは消えてきた。当時は首都移転の議論と混在されたためについえたが、道州制の議論を今蒸し返したところで、実現性は乏しいのではないか。
現代においては、「広域連合」の制度を上手く活用することが一案となり得る。2000年の地方分権一括法施行時にできた仕組みだ。この制度を活用すれば、例えば、高齢者の増加による医療・介護サービスの提供体制が課題になっている近隣の自治体同士が連携することで、これまで以上に効率的かつ効果的な医療資源配分が進む可能性もある。
だが、現状「広域連合」の活用は極めて限定的であり、さらなる後押しが必要である。
耳に痛いことではあるが、「都道府県」という制度も未来永劫続くものとは言い切れないことも想定しておく必要があるのでないか。
昨今の急激な人口減少は日本史上かつて経験したことのない事態であり、中長期的な視点に立てばむしろ、「都道府県」という枠組み・発想から脱し、「札仙広福(札幌・仙台・広島・福岡)」のような政令指定都市は残しつつも、人的資源・財源・権限を市町村に移譲させる発想が求められているのではないか。もちろん、それには、市町村の覚悟も必要であり、住民も地方自治を「自分事化」として捉える意識転換が欠かせない。
これらは、明治の廃藩置県以来の大転換になる。地方自治のあり方自体を時代の変化にあわせて、見直すべき時期に来ていることを、私たちは真剣に受け止める必要があるのではないか。
