2026年4月12日(日)

日本の縮充化

2026年4月12日

 共通しているのは、Uターン、地域や家族の協力、国の資金の活用である。さらに重要なのはレザーファンの大量出荷による八丈ブランド、黒毛和牛の一貫生産による五島ブランドと、いずれも青年たちが故郷のブランドを売り出そうとしていることである。彼らは同業の仲間を増やすことに努めている。すなわち「愛郷心」を再生産している。

 愛郷心はかけ声だけでは育たない。郷里の風土に合った商品やサービスを提供することで生計を立てられるよう資金とノウハウを提供し、彼らの創造力を発展させるため手を貸すことが大切だ。「愛郷心あっての愛国心」ではないか。そのためには地域の充実が大切である。

 国土を守るのは軍事力だけではない。地域が充実してこそ国土が守られる。2000年に東京都の新島村で大きな地震があり、島内各地で崖崩れがあった。島の北部には数百人が住む若郷という集落があった。天然の良港があり、漁業で栄えている。

 当時東京都の副知事だった筆者はすぐにヘリで現地に飛んで若郷の港の埠頭に降りた。島の中央部と結ぶ崖沿いの道が大きく崩落していて、土木の専門家の見解では崖沿いの道を再建してもまた崩落する恐れがあるということだった。

 政府首脳も次々と視察に来て、国費が出る見込みも立ちトンネルを掘ることが決まった。数百人の住民のために100億円超の金をかけるのか、という声も実際に届いたが、若郷の人たちと新島村役場・村議会の熱心な要望もあり、「平成新島トンネル」はつくられた。おかげで今も若郷に人々は住んでいる。

新島村の「平成新島トンネル」。全長約2800メートルを誇る(PHOTO AC)

 東京都という都道府県機能だけでトンネルはできなかった。村が地域の声を代表し、地域を守ろうと声を上げたから、国土が維持された。近年、国は「こども家庭庁」や「デジタル庁」など次々と新しい「庁」をつくり、組織を拡充している。「防災庁」の設置も間近かもしれないが、市町村という基礎自治体を充実させることにこそ意を用いるべきだ。

減り続ける自治体職員
今取り組むべき対策は

 グラフに見るように、全国の地方公共団体の職員数は21世紀に入ってから減り続けている。現に全国の市町村で職員定数条例に定める職員定数を満たしていない自治体は多い。条例定数の3分の2くらいしか職員がいない例もある。いくつかの係長ポストを兼職する例は決して珍しくない。

 全国知事会は25年12月、市町村職員の減少も踏まえ、「どの市町村でやっても同じ業務は、共通化できれば都道府県が引き受けることもできる」という考え方を発表した。しかし、これだけで根本解決とはならない。各市町村にはそれぞれの特色があり、「どの市町村でやっても同じ業務」ではない仕事も多い。浅沼さんや山口さんの例を都道府県が個別に支援することはできない。地域に密着する市町村だからできる。


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