「完璧なエネルギー資源は地球上に存在しない」
第1章ではまず、気候変動がもたらす脅威、各エネルギーのトピックス(石油、天然ガス、石炭、原子力、再生可能エネルギー)、エネルギー政策の課題など、議論の土台を提示する。
それを受けて第2章で、各エネルギーにまつわるリスクを概観し、「安全」にかかるコストと「安全のガバナンス」とは何かを考える。
著者らは、原子力発電所のみならず、石炭採掘現場や水力発電ダムにおける事故や災害、オイルタンカーの衝突事故、石油掘削施設の引火爆発などの事例を挙げ、「現在、環境に悪影響をおよぼすことが皆無であるエネルギー資源は存在しないことは言うにおよばず、関係者および消費者に深刻なリスクをいっさい引き起こすことのない、完璧なエネルギー資源は地球上に存在しない」と断じる。
スイスのパウル・シェラー研究所やOECDによる重大事故、死者数の比較を具体的に示し、「すべてのエネルギー産業において、安心は大きなテーマであり、これは原子力エネルギーだけに限った話ではない」と説く。
したがって、「より安全にエネルギーを確保するためのコストを見積もるには、すべての産業活動に内在するリスクを分析し、それらを管理するコストを考えなければならない」。
「シェールガスの開発、メキシコ湾原油流出事故、福島第一原発事故なども、そうした観点からリスク評価してみるべき」という提案に、賛成である。
<当該の産業界には、どのようなリスクを引き受ける準備および能力があるのだろうか。環境および経済の面から見て、社会が受け入れ可能な現時点および将来にわたるリスクは、どのようなものなのだろうか。エネルギー源ごとに内在するリスクは異なるが、財政支出を削減しなければならない状況において、経済面からは、どのエネルギー源を選択すべきなのだろうか。さらには、どのようにすれば本当の「民主的なリスク管理」を実現できるのだろうか。なぜなら、民主的なリスク管理があってこそ、社会を機能不全に陥れることなく、さらなる科学技術を追究していくことができるようになるからだ。>
これらの問いは、福島事故を経験した日本にとって大いに示唆に富むものだろう。
シェールガスの掘削禁止を可決した
フランス国民議会
フランスでも、2011年春、シェールガスとシェールオイルについて著者らが当惑するような「空回りした議論」があった。