2024年4月20日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2014年7月25日

 アメリカはこれらの開発により2030年まで天然ガスの自給が可能となり、ヨーロッパでも、ドイツはすでに採掘技術を開発。ポーランド、デンマーク、キプロスも資源開発に着手することが国家の優先課題になっている。それに対し、フランスでは「冷静な議論がおこなわれなかった」。

 <要するに、近視眼的な選挙闘争のために、利用可能な新たなエネルギー源を(一時的に?)手放すことになってしまったのだ。もちろん、地域住民の感情も理解できる。だが、地元の承諾を取り付けることなく掘削権が事前に付与されるなど、シェールガスをめぐる討議は、開始当初から誤った方向に進み、地元の理解が得られる雰囲気ではなかった。>

 フランスの国民議会は、試掘の必要性を熟議せずにシェールガスの掘削禁止を可決したが、それでも、著者らは、「フランスのエネルギー政策をまとめるにあたって、それらの新たなエネルギー源の経済的な潜在力を見積もることは、必要不可欠だ」と訴える。

 なぜなら、「ロシアなどの天然ガスの供給国と交渉する際に、フランスも大量の天然ガスを保有していることが誇示できれば、交渉相手のトーンが変化するだろうからだ」。

 この論理は、日本が化石燃料を購入する際の“手持ち札”としての原子力の役割にも通じるだろう。

法手続きの簡素化や
「エネルギー民主主義」が課題に

 同じような問題は、ドイツでも持ち上がっている。

 ドイツ北部で発電した「グリーンな電力」を南部へ送電するには新たなインフラが必要となるが、「はたして世論はこれを受け入れるだろうか」と、著者らは疑問符をつける。

 <2025年から30年にかけて、2万5000メガワットの発電能力をもつ洋上発電所を北海およびバルト海に設置する計画をもつドイツは、ここ10年以内に新たに4500キロメートルの高圧送電線を敷設しなければならず、そのためには、敷設計画の認可手続きを簡素化させ、そうした手続きを統合するための法整備が必要となる。>

 各国単位でも、ヨーロッパとしても、法手続きの簡素化や「エネルギー民主主義」が課題になる、というわけだ。


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